山田将司と村松拓による、とまとくらぶ。新曲「Whaleland」で描いた〈等身大の自分たち〉
山田将司(THE BACK HORN)と村松拓(Nothing’s Carved In Stone/ABSTRACT MASH)のヴォーカリスト2人が組んだユニット、とまとくらぶ。結成から1年が経ったが、カッコ内のバンド名との落差には相変わらず慣れない。しかし、ようやく配信リリースされる2曲目「Whaleland」がすこぶる良い。
ロックバンドのフロントマンによるアコースティックユニット、という枠から自分たちを解放し、バンドのイメージから離れた〈等身大の自分たち〉を描き出すことに成功している。そしてそれは、この2人の人間関係によるところが大きい。お互いを知りすぎているからこそ、とまとくらぶ、というネーミングだった。そして誰もの心にすっと寄り添う、優しい曲ができたのだ。そんな楽曲について2人へインタビューした。
子供の自由さが、この曲にあったらいいなって
ーーとまとくらぶ、ようやく2曲目が配信リリースです。 山田「結成から……どれくらいだっけ?」 村松「1年2ヵ月くらいじゃん。確かにペース遅い(笑)」 ーーこの「Whaleland」、歌詞がいいですよね。 山田「今回、2人で全部作ったもんね。共作」 村松「これまで、どっちかがコード進行を持ってきて、相手がそれにメロを乗せたり、〈故郷〉は将司さんが曲書いてくれてて。〈Whaleland〉は合作です」 山田「一緒にスタジオ入った時、拓が『こんなのどうすか?』ってコードを持ってきて。Aメロもできてた。でもサビがまだだったから、それは俺が持ち帰って、メロを作り直してきた」 ーーそういう作り方は新鮮? 山田「ここ最近、バンドでそんなことやってないから、そういう意味では新鮮かな」 村松「俺もスタジオで、これどうすか?ってやりながら曲作るの、バンド始めた頃以来ですよ」 ーー歌詞はどう? 山田「拓の家で、真面目に向き合いながら書いてる。『ここはこういう言葉のほうがいい』とか『こういう視点のほうが面白い』って。あとシチュエーションを話すことが多いな。この曲だったら『なんか首都高を走ってるイメージなんだよな』『あ、俺も』みたいな。そういうやりとりしながら、曲を詰めていく」 村松「この曲は最初、将司さんがサビのメロディを入れてきてくれた時に〈弓張月の空 泳いだクジラの群れ〉って歌詞がもうついてたんですよ……でも、なんでクジラだったの?」 山田「空をクジラが泳ぐって、子供の自由な夢、みたいなイメージがあって。大人になったら絶対そんな想像しないじゃん? そういう子供の自由さが、この曲にあったらいいなって」 村松「いいよねえ。俺らって今、100%自由になることなんてないじゃん。いろんな箱を自分で作ってて。何も考えずにいれる時間って、夜中の高速を流してる時くらいかな、って。そこから見上げた空に、クジラが一緒に泳いでるっていいなって」 山田「拓の話に近いけど、自分たちを解放できる場所にしようとしてるんだよね。自然に」 ーー解放? 村松「僕はバンドをいくつかやってますけど、ナッシングスやアブストは、僕とメンバーの火薬を混ぜ合わせて、その人としか生み出せない花火をバーンと打ち上げて、聴いてくれる人たちの気持ちをどんだけ鼓舞できるか、そういう気持ちがあるけど、とまとくらぶでは今のところないんですよね」 ーーなるほどね。 村松「どっちがいい悪いじゃなくて、自分にとってバンドは等身大じゃ足りない部分があって。背負ってるもんとかあるから。これはね、等身大で表現できた気がしてんの」 山田「そうだね。俺も、自分がバンドで持ってなきゃいけないものを意識してるところがあって。とまとくらぶは、そこから解き放たれてる場所であることは間違いない」 ーーそれをひとりでやるんじゃダメなの? 山田「んー、2人だから生まれてる言葉がいっぱいあるし、拓とやることで自分らしさを引き出してもらえてると思う」 ーー2人の作るメロディと歌詞、マジでいいのよ。でもとまとくらぶって、そのネーミング含め、仲のいい2人がバンドの合間に弾き語りで遊んでる、としか見られてないんだよね。 山田「まだ2曲しかないから(笑)、でも1年前に出した〈故郷〉と、今回の〈Whaleland〉以外に、あと2曲録ってて。その曲は全然違う感じ。アイリッシュ調の曲があったりね」 村松「でも歌詞書いてる時、ケンカになって」 ーーなんで? 村松「ちょっと俺がヘコんだんですよね。将司さん、自分の歌詞やフレーズに、ここいいよな、みたいに言うのに、俺の歌詞にはいろいろ注文つけてくるから(笑)」 山田「拓がちょっとイジケたんだよな(笑)。『なんで毎回そうやって俺の歌詞にそういうこと言うんだよ』って」 ーー痴話喧嘩だ(笑)。 村松「それで俺の家から帰っちゃった。歌詞書いてる途中に」 ーーとまとくらぶ解散の危機が。 山田「今日はいねえほうがいいな、と思って」 ーー年上女房的な包容力(笑)。 村松「でも次の日、どうしても曲は仕上げたいから、LINEで〈どうです?〉ってふわっと雰囲気探って。ファミレスで待ち合わせて、歌詞仕上げた」 山田「たぶん曲作りも4曲目になって、今までの歌詞の作り方とかの鬱憤をぶつけ合ったんだよ」