カキ殻砕き農地に 米や野菜育てブランド化 岡山県で循環農法広がる
岡山県で、瀬戸内海で水揚げされたカキ殻を砕き、農地に施用し水稲や野菜を育てるという循環型の農法が広がっている。JAグループ岡山は、この農法で栽培された米を「里海米」としてブランド化。栽培面積はこの8年で約560ヘクタールまで増えた。 【画像】ブロードキャスターによるカキ殻資材の散布作業 JA全農おかやまが、米のブランド化や海の保全活動へ「瀬戸内かきがらアグリ推進協議会」を2018年に設立した。県内JA、水産事業者、生産者や量販店、行政など90組織で構成し、生産から消費まで一貫した組織づくりを進める。 県北部に位置する真庭市は、「真庭里海米」として市内全ての小中学校26校の学校給食に提供し、ふるさと納税の返礼品に採用する。 同市内で「きぬむすめ」1・4ヘクタールを「里海米」として栽培する農家の神尾健一さん(55)は「カキ殻は土づくりの資材になる。長年施用している水田は、根張りも良く、倒伏もしない」とメリットを語る。協議会内で「自分たちが作った米が売れ、(実需者から)もっと作ってほしいと言われるとうれしい」と笑顔だ。 カキ殻資材は、広島県福山市のメーカーで加工されてJAを通じて農家の元に届く。10アール当たり60キロを施用。全農おかやまによると、資材費は10アール当たり2000円程度だ。 2回目の耕うん前までにブロードキャスターを使って散布する。細かく砕いたものと機械散布に対応した粒状の資材がある。全農おかやまによると、19年産米の1等米比率は「里海米」が83%とその他の県産米と比べ6ポイント高かった。全農おかやまは「良質な米生産につながっている」と話す。 「里海米」は、品種別に高温耐性に優れた「きぬむすめ」32%、「にこまる」10%、「アケボノ」7%の他、「コシヒカリ」12%など。 全農おかやまは「同じような価格帯で商品が並んでいたら、『里海米』が選ばれるようブランド化に取り組みたい」(農産課)と意気込む。
野菜、酒…活用広がる
施用したカキ殻が、土中の栄養分と共に再び海に注がれるという資源循環を目指す「里海米」から始まったこの取り組みは、野菜や日本酒、卵、黒豚へと広がる。 21年にはナスで「里海野菜」を始め、キュウリなど品種を増やす。「里海米」で日本酒を醸し、カキ殻配合の飼料を給餌した鶏や豚は「里海卵」や「里海黒豚」としてブランド化。人や社会、環境に配慮した消費行動「エシカル消費」の受け皿として付加価値を高めている。(大森基晶)
日本農業新聞