【漫画家に聞く】オリジナルカードゲームを作ったら学校中に広まって……『あのときのこどもさん』が平成世代を直撃
インターネットがなかった時代。もう戻れない平成初期の空気感を漫画にした『小学生の頃にオリジナルカードゲームを作ったら学校中に広まって大変なことになった思い出』がXで人気を集めている。 平成世代を直撃する漫画『あのときのこどもさん』(小学生の頃にオリジナルカードゲームを作ったら学校中に広まって大変なことになった思い出) この作品はカメントツさん(@Computerozi)による連載作『あのときのこどもさん』の1エピソードだ。ノスタルジックなだけでなく、リアルな関係性が深かった世界を描くことで、現代の我々が忘れた何かを逆説的に提示する本作。この裏にある作者の意図とは。(小池直也) ――1.2万以上のいいねが付いていますが、ご自身としてはいかがですか? カメントツ:読者の方から迷路を作っていたとか、なぞなぞを出し合っていたという、小学生なりのクリエイティブな話が集まってきたのが印象的でした。そういった思い出がSNSを借りて今に復活するきっかけになれたのは嬉しかったです。 ちょうど小学生1、2年生くらいの時に「Windows 3.1」がブームで触らせてもらったりしていた世代。しかもネットに繋がっていない。最近の子どもからしたら意味がわからないと思いますけど(笑)。もちろん「昔はよかった」ではなく、今はもっとワクワクするものが生まれるはずですから。それを応援したい。 ――連載漫画を書くきっかけは? カメントツ:今年で漫画家としてキャリア10年目になります。そこで考えていたのは「読者を意識しつつ、自分が描いていて楽しいものって何だろう?」ということ。サービス業に振りすぎてもクリエイターとしての寿命を縮めるし、描きたいものだけを描くのも違うなと。そのバランスが取れた作品を描いてみたのが本作でした。 やっぱり担当編集の方と飲みながら無限に話せるのは、昔遊んだおもちゃの話題とかなんですね。あと大好きだった平成の『ちびまる子ちゃん』や『こちら葛飾区亀有公園前派出所』のつもりで描いています。 ――基本的に実体験ベースで考えられるのでしょうか。 カメントツ:割合は大きいですね。僕は2~3歳くらいから記憶が鮮明にあるんです。だから子ども時代の話をしても、親や友人が覚えていなくて寂しいと感じることが多い(笑)。このシリーズのネタを考えるとタイトルやテーマが尽きないんですよ。自分の記憶力には助けられています。 ――それは『小学生の頃にオリジナルカードゲームを作ったら学校中に広まって大変なことになった思い出』も同じ? カメントツ:フィクションの部分もありつつ、基本的には実話です。学校中で流行ってから、強いカードばかり作る人や、現金で売る人が現れてブームが衰退し、「人は思い通りには動かない」という社会の難しさを小学生ながらに感じました。子どもの世界でもルールをハックする奴は現れる(笑)。 ――この子どもたちのなかで自身はどのようなポジションでしたか? カメントツ:実際は僕が8割方のルールを考えたり、制作を担当していました。漫画のキャラクターは自分のパーソナリティを分散して登場させているんです。ただ小島というキャラクターは現実にいる頭のいい友達で、僕のアイデアを整理して形にするヒントをくれました。 ――インターネット前夜だった平成初期、あの雰囲気をきちんとアーカイブしていくのも大事だと感じます。 カメントツ:そこは語っていかないと。あたかも「よくなかった」とされたり、単純に忘れさられていくと感じます。あの空気感は言語化されていない部分が多い。単に「インターネットがない」だけではないんですよね。それにしても、ネットの発展と自分の青春との癒着を経験できたのは貴重でした。 ――今後描きたい漫画は? カメントツ:怖い話や不思議なことに小さい頃からワクワクします。僕より若い世代が新しいものを作っているなか、自分の世代が描ける不気味なものがあると思うので、新しいホラーには挑戦したいですね。あとは自分の読みたいもの、描きたいものを作りつつ、大人として世の中に伝えるべきことも織り交ぜていければ。
小池直也