『うち弁』における“悪役”的存在? 江口のりこ、大倉孝二ら天野法律事務所のメンバーたち
山崎(松尾諭)と協力して刑事裁判で有罪をひっくり返した天野杏(平手友梨奈)がまたひとつ自信をつけて、ちょっと嬉しそうにその日の仕事を終えようとした時、“その人”が現れた。天野法律事務所の天野さくら(江口のりこ)のである。いつも香澄法律事務所の前に立ちはだかってくる天野法律事務所は、苗字からもわかるように、実は杏にも深く関係している。今回は、今のところ“悪役”といえる天野法律事務所のメンバーに注目していきたい。 【写真】ムロツヨシ×平手友梨奈インタビュー撮り下ろしカット 第1話のテレビ局でのパワハラ問題から、ことあるごとに杏と戦ってきたのは、ベテラン弁護士・海堂俊介(大倉孝二)である。杏を動揺させようと揺さぶりをかけたり、自分が有利になるように大学の同期だという検事に裁判の時に便宜をはかってくれるよう口利きをしたりと海堂は、勝つためなら手段を選ばず、強引な手法も辞さないタイプだ。ただ、自分自身もボロを出しやすく、最近は杏に負かされているため、さくらからの信頼を失いつつある。海堂を演じているのは、劇団ナイロン100℃に所属し、舞台だけではなく、映画やドラマでクセとインパクトのある役柄を演じ、バイプレイヤーとして知られている大倉孝二。本作に出演しながら、鈴木亮平主演のTBS日曜劇場『下剋上球児』にも登場。南雲(鈴木亮平)の妻である美香(井川遥)の元夫・小柳晴哉として出演していることが明らかになり話題となった。小柳は別れた今でも美香や息子の青空(番家天嵩)のことを気にかけており、今後も物語に関わってくる存在と見られている。 海堂の次に杏の前に現れたのは、弁護士の大神楓(菅野莉央)。今後しばらくはこの大神が杏の行く手を阻むことになるのかもしれない。仕事がとにかくできる大神は、弁護士業務だけではなく、慕っているさくらのサポートまでこなしている。理論的に相手を追い込んでいくところから「アンドロイド」とまで呼ばれている。第5話で大学のボクシング部の練習中に起きた事故で大学側の責任が争点となった際、香澄法律事務所を訪れた大神は誰にもしゃべる隙を与えず、まさに立て板に水のごとく話し続けた。だが、その完璧すぎる仕事が逆に矛盾を生み、自らの依頼人を勝たせることはできなかった。大神を演じる菅野莉央は2歳の頃から子役として事務所に所属し、1993年生まれながら20年以上のキャリアを持つベテランだ。江口のりことは『SUPER RICH』(フジテレビ系)でも共演し、菅野は、会社を立ち上げた衛(江口のりこ)のことを慕い、彼女の右腕となって働く優秀なマーケター・鮫島彩を演じた。奇しくも本作と同じような立場である。鮫島は衛から信頼され、会社の発展に貢献したが、果たして今回はどうなるだろうか。 杏にとって“ラスボス”となるのが、天野法律事務所の所長・さくらである。さくらは弁護士だった父の死後、勤めていた法律事務所を辞めて、所長を継いだ。杏とは母親違いの異母姉妹だが、なぜか折り合いが悪く、杏もさくらに会うと怯えた様子を見せている。 なにかと杏が所属する香澄法律事務所に食ってかかるが、その思惑はまだ見えてこない。演じている江口は印象的な顔立ちながらどんな作品にも溶け込み、幅広い役柄を演じることができる稀有な俳優である。 先に触れた『SUPER RICH』で演じた衛は、年下男子の春野(赤楚衛二)から熱烈なアプローチを受け、戸惑いと恥じらいを隠せないかわいらしさをみせた。民放連続ドラマ初主演となった『ソロ活女子のススメ』シリーズ(テレビ東京系)で演じた五月女恵は、ラブホテル、水族館、プラネタリウムなどにひとりで赴いて、贅沢な“ひとり時間”を楽しんでいる。その姿がとても自然体でこちらまで好奇心が満たされ、ほっとする。一方で『連続ドラマW フィクサー Season2』(WOWOW)で演じた検察官・佐々木雪乃や本作のさくらはクールなところが際立ち、棘のある言葉や氷のような視線にはゾクゾクさせられる。香澄法律事務所のメンバーや蔵前(ムロツヨシ)の優しさと対極にあるようなさくらの態度は、本作の中で、よい緩急として作用しているのではないだろうか。 最年少で弁護士になった杏は十分に優秀だと思うのだが、そんな彼女に対してさくらは「弁護士を名乗る資格なんてないのにねえ」と蔑み、さらには「あんたは生きてるだけで法律に反してる」とかなりひどいことまで口にしている。過去、ふたりの間に大きな亀裂を生む何かがあったことは明白だ。杏が人間として大きく成長するためには、必ずここを乗り越えなければならない。さくらが何を目の敵にしているのかが今のところよくわからないことがもどかしいが、杏には焦らず一歩、一歩進んでほしい。
久保田ひかる