〈解説〉エミー賞18冠の『SHOGUN 将軍』は全米中が高評価なのか?ここでも見えるアメリカの“分断”
トランプを笑いの種にする風潮
お笑いテレビ番組も寄ってたかってトランプを面白おかしく笑いのネタにしている。NBCのサタデーナイトライブでは、トランプのテレビコマーシャルに似せて、「メディアはトランプを悪く言っているが、本物のアメリカ人はどう言っているか」という問いかけに、素朴そうなアメリカ人たちが、トランプは「本物だ」、「仕事を増やした」、「国を再び偉大にした」などと笑顔で答える。ところがよく見るとそのアメリカ人たちは、腕にナチの腕章をしていたり、アイロンがけをしていたのが白人至上主義の団体の頭巾だったりするというオチで、笑いと拍手が起きる。 また、主要テレビ局には深夜時間帯にナイトショーを放送する文化があるが、そこでもトランプがやり玉に挙がっている。CBSのスティーヴン・コルベアショーでは、過去の大統領の等身大人形を飾る館の改装が行われたというナレーションに続いてその内部が映し出されると、ほかのすべての人形が正装する中、トランプだけがオレンジ色の囚人服を着せられている。 それぞれが業績を語る中、リンカーンが「奴隷解放宣言を制定した」と述べた次に、トランプは「私はポルノスターとセックスしてそれを隠すためにいろんなごまかしをした」と述べて、奉仕活動のためのごみ拾いに行ってしまい、そこに笑い声がはいるというものが放送された。むろんバイデンやハリスも笑いの対象となるが、トランプを題材とするものが数の上で圧倒的で、しかもどぎつい。 ハリスの副大統領候補であるティム・ウォルズがトランプのことを「ウィァード」(変な奴)と呼んだが、それはメディアでは問題化されなかった。これまでトランプは様々な少数者を侮蔑的に語ってきたことで散々批判されてきたが、トランプに対しては蔑称で呼んでもよいのかと不公平に感じた人もいたはずである。
確かにトランプ自身はもともとテレビ界の人間として、半ば笑いの種になることで人気を博してきた。そのため、トランプを「いじる」のは許されるというのもわからなくはない。ただ、トランプがタレントから大統領候補や大統領になって以降も、体格に比べて手が小さい、後ろから毛を無理やり前に持ってきた髪型がおかしい、オレンジ色の顔色が変だ、などその外見を笑いものにするメディアの姿勢は目に余るものがある。