フェイクニュースと陰謀論の〝リアルすぎる映像化〟 エンタメで楽しんでワクチンに「フィクショナル」
「選択」を迫られる世界で
生成AIの進化で真偽がはっきりしないフェイクニュースがネット上にあふれている。それでも、私たちはこの世界の中で「選択」して生きていかないといけない。 「そもそも、神保がこの事態に至ったのは、映像作家から仕事を紹介すると提案されていたのに、淡い恋心から過去に憧れた先輩の誘いを選んだ結果。神保は分からなくなりながらも何かしら行動していくし、最後まで選択を迫られる。僕の中に、分からない状態でも道を選んで進んでいかないといけないという気持ちがあって、その感覚が映画の中に投影されている面があるかもしれない」 フェイクニュースや陰謀論といったテーマより、「のろい」のようなオカルトっぽいものの方が見ている人の反応はいいと感じているという。「フェイクニュースや陰謀論は身近すぎて、エンタメとして面白がれないところがあるんでしょう」と類推する。
ウイルスのようにはびこるフェイク
それでも今回は自分たちが好きなフェイクニュースや陰謀論をテーマに選んだ。発信者の姿が見えないフェイクニュースは、まるでウイルスのように変異しながら拡散していく。それらに触れ続けることで、現実と虚構の境界をさまよう人は生まれる。日本でも、事態はシビアになりつつある。 「現実にいろいろな問題が起こっていて、深刻な問題も多い。エンタメとして楽しみづらいという人が多いのも確か。でも僕はエンタメとして楽しんでしまうタイプ。こうした問題をエンタメとして楽しむことが、ある種、ワクチンになると思っている」と大森は語る。
毎日新聞記者 佐々本浩材