大谷翔平を毎朝“真似”…63歳元プロの自省 伝えたいセンスの本質「私は足りなかった」
1つの継続で培われる自信「もっと難しいことに挑戦する気持ちも芽生える」
広瀬氏は高校、大学、社会人野球を経て、プロでは13年間プレーした。昭和、平成のやり方とは違っても、自身の長い経験のエッセンスを子どもたちや、その親に伝えていきたいと考えている。「たとえば、『センスとは何か』という話をすることがある。技術的に上手であることが『センスがある』と思われがちだけれど、私は努力ができることこそ、センスだと思っています」とその一端を明かす。 「私は努力が足りなかったから、あれくらいの選手で終わったけれど、イチローくん、松井秀喜くん、今で言えば大谷翔平くん(ドジャース)がバットを振る数はとんでもなかった」と子どもたちに語りかけている。 「他人が実践しているものでも、いいことは積極的に真似をすればいい。実は私も今、(高校時代に率先して寮のトイレ掃除をしていたといわれる)大谷くんの真似をして、毎朝トイレ掃除をしているよ」とも。 「私も子どもの頃、素振りを100回やれと言われてもやらなかったが、10分間のトイレ掃除なら、比較的簡単に継続することができるのではないか」と広瀬氏。「やり続けるのは大切なことで、1つのことを続けられれば、自信がついて、もっと難しいことにチャレンジしようという気持ちにもなれる」と説明する。 一方で、「今の子どもたちは、ある意味では“かわいそう”」と思うこともあるという。「私が学生時代は、指導者から怒られたり殴られたりするのが怖くて、しかたなく練習していたところがあったが、そのお陰で、みんながある程度のレベルに達することができたと思う。今は、指導者が『馬鹿野郎』という言葉も吐いてはいけない時代。子どもたちは怒られないかわりに、自分で考えてやらなければいけない」と指摘する。 「今の時代にも、ものすごく努力している子どもはいる。自分で考えて努力することができない子どもは、大人になって気がついた時、とんでもない差をつけられていますよ」と、主に保護者たちへ訴えているという。時代が変わっても、野球には変わらない本質がある。それを体に刻み込んでいる広瀬氏には、次代へ伝えるべきことがたくさんある。
宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki