石井ふく子さんと美空ひばりさん像

＜ニッカンスポーツ・コム／芸能番記者コラム＞ 　1989年（平元）に52歳の若さで死去した国民的歌手・美空ひばりさんのブロンズ像が、約30年間設置されていた京都から福島県いわき市塩屋埼の灯台下に移転され、10月17日に除幕式が行われました。 　テレビプロデューサー石井ふく子さん（98）は晩年のひばりさんが信頼した“心の友”として知られています。長男のひばりプロダクション加藤和也社長（53）の後見人にもなっています。 　石井さんのあいさつの第一声は「今日はひばりさんが喜んでいると思います」でした。そして、2人の出会いについて話し始めました。 　「ある時、自宅のエレベーターの下で声がするんです。『どなた様ですか？』と聞いたら『加藤です』と。『加藤ってどなた様ですか？』と聞くと『和枝です』。『和枝ってどなたでしょうか』と聞くと『加藤です』」 　まるでドリフのコントのようなやりとりですが「美空ひばり＝加藤和枝（本名）」がすぐに結び付かなかったそうです。やがて、ひばりさん本人と分かって招き入れると「あなたは好き嫌いが多いって聞いたから食べなさい」と手作りの料理を差し出されました。良く分からない料理なんて本心では全く食べたくない。でも、わざわざ持ってきてくれたので、仕方なく口にしたら「それがすごくおいしかったんです」と続けました。 　入院していたひばりさんに頼まれ、愛犬を病室に連れて行ったエピソードも披露しました。「病院の先生に怒られるから隠して持ってきて」。どうしようかと思案したあげく、「風呂敷にかぶせて隠しました。15分だけいて、また風呂敷にかぶせて持ち帰りました」と懐かしそうに振り返りました。 　ひばりさんの死去から35年です。「誰でも分け隔てなく普通に付き合った。そこが偉大なところです」。真摯（しんし）な人柄に触れた後で「ひばりさん以上の人は出てきません」。オリジナル楽曲を517曲発売した国民栄誉賞歌手をたたえました。 　塩屋埼は87年に発表したヒット曲「みだれ髪」の舞台でファンからは“ひばりの聖地”と呼ばれています。この日、聖地に集まった約600人が、石井さんのあいさつを聞きながら不世出の歌姫に思いをはせました。【松本久】