福山ミステリー文学新人賞に竹中篤通さんの「片腕の刑事」選出…島田荘司さんが選者
広島県福山市出身のミステリー作家・島田荘司さんが選者を務める「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」の実行委員会は29日、第17回受賞作に愛知県在住の医師、竹中篤通さん(36)(ペンネーム)の「片腕の刑事」を選んだと発表した。来年3月に原書房から出版される予定で、竹中さんは「賞に恥じない、立派な作家になれるよう頑張りたい」と喜びを語った。
「片腕の刑事」は、「商業ビルの階段に、右腕を切断された死体がある」との通報を受けて現場に急行した刑事の1人が、その場で右腕を切断された死体になるという不可解な殺人事件を描く。 緻密(ちみつ)なストーリー構成と、犯人捜しの過程でのスリリングな展開が評価された。
竹中さんは、愛知県内の総合病院で放射線科医として勤務。月1~2回の宿直勤務時を除き、出勤前の約2時間を執筆作業にあて、半年ほどで「片腕の刑事」を完成させた。これまでに約20作を書き上げて文学賞に応募しているが、受賞は今回が初めてという。
ふくやま文学館(福山市丸之内)で記者会見した竹中さんは、自身の作風について「医学的な専門知識を作品に落とし込めるのが特徴」と解説。「今後も医師を続けつつ、読者に楽しんでもらえる本格ミステリーを創作したい」と意気込んだ。
同賞はミステリー文学に新風を送ろうと島田さんの提案で創設され、人気作家の知念実希人さんらを輩出。今回は国内外から68作品の応募があった。島田さんは「レベルの高い作品が多く、選考は面白かった。新人作家の登竜門として賞が浸透してきたことをうれしく思う」と話していた。