春闘で予想を大幅に上回る賃上げ:日銀マイナス金利政策解除の決定打に
日銀マイナス金利政策解除はほぼ確実か
連合は3月15日に、春闘の第1回回答集計値を発表した。定期昇給分を含む賃上げ率の平均値は+5.28%と昨年の第1回回答集計値の平均値+3.80%を大幅に上回った。33年ぶりの+5%超えとなる。事前予想の平均値は+4%程度だった。 また、一人当たりの平均賃上げ率に大きな影響を与える基本給の引き上げ率、いわゆるベースアップは+3.70%と、昨年の第1回回答集計値の平均値+2.33%をやはり大幅に上回った。 この大幅な賃上げ率は、3月18・19日の金融政策決定会合で、日本銀行がマイナス金利政策の解除を判断する決定打になったと考えられる。 現時点で、実質賃金上昇率のトレンドは、-1.5%~-2.0%程度と考えられるが、高い賃上げ率を受けて、これが一気に-0.5%程度まで縮小する可能性がある。筆者は実質賃金が安定的にプラスになるのは2025年後半と今まで予想してきたが、これを2024年後半へと前倒しする。
実体経済への影響は大きくない
賃上げ率は33年ぶりの+5%超えとなるが、賃金上昇率に大きな影響を与える消費者物価上昇率は、昨年時点で既に40年ぶりの水準まで達していたことを踏まえると、予想外に上振れたとはいえ、異例な事態が生じたとまでは言えない。 そして、賃金上昇率の上振れは、個人消費に好影響を与えるとともに、先行きの物価上昇率見通しを上方修正させる要因ではあるものの、それは大幅なものではないだろう。物価上昇率の低傾向が続く中、来年の春闘での賃上げ率は今年の水準をかなり下回ると予想する。 そもそも実質個人消費の基調を決めるのは、実質賃金上昇率のトレンドであり、それは労働生産性上昇率で決まる。そこに変化がないのであれば、実質個人消費のトレンドは変わらない。また、実質個人消費のトレンドは変わらないのであれば、企業の価格引き上げ姿勢のトレンドは変わらず、その結果、賃金上昇率のトレンドも変わらないことになるだろう。 1回の賃上げ率の上振れで、日本経済や物価、名目賃金、実質賃金のトレンドに大きな影響を与えることはないだろう。影響は、比較的短期的なものにとどまると見ておきたい。