大谷翔平を救ったロバーツ監督の『魔法の言葉』 通訳スキャンダルに巻き込まれ…苦しみの“1号”から快進撃は始まった【2024年ちょっといい話】
【大谷翔平と仲間のちょっといい話(第1回)】 ドジャースの大谷翔平の2024年シーズンは最高の結果となった。悲願の「世界一」を掴み、個人では史上初の「50―50」を達成。大円団の結末となったが、新天地でのシーズンは監督やチームメートら「仲間」の存在も大きかった。その「仲間」との心温まる、ちょっといい話を10回に渡ってお届けする。 ◆待ってたぜ大谷翔平…1号は、らしい豪快弾【動画】 ◇ 「翔平らしくいれば、それだけでいい」。4月3日のジャイアンツ戦の試合前。まだ、移籍後初アーチが出ていなかった大谷翔平に、ロバーツ監督は歩み寄って言った。 常にオープンマインドを心掛ける指揮官は、大谷の気持ちを和らげたかった。「自分は、選手がいいパフォーマンスができるように自分の感じたことを話す。選手の前で、正直になるのが大事だ」。 開幕してすぐに、大谷は選手生活で初めてといっていいスキャンダルに巻き込まれた。元通訳の巨額銀行詐欺事件が発覚し、周囲の雑音は日増しに大きくなった。 そんな状況下で、新天地の戦いが始まった。元来、スロースターター気味の大谷ではあるが、「1本」が欲しかった。「早く打ちたい、打ちたいという気持ちが、いい打席からかけ離れた(要因だった)」。 待望のドジャース1号は、本拠地ドジャースタジアムだった。7回。ジャイアンツの左腕ロジャースのシンカーを捉えた。開幕から41打席目。ファンの絶叫とは対照的に、大谷のダイヤモンド1周は喜びより安堵(あんど)感がにじんだ。 「自分の中ではかなり長い間、打っていないという感覚だった」。早く結果を出して、チームの一員になりたいという思い。珍しく焦燥感が出ていた大谷を、監督の言葉が自然体に戻した。試合後のインタビュー。指揮官への感謝の言葉が口をついた。「監督の言葉が、気持ちを楽にしてくれた」。この1本から、大谷の快進撃は始まった。(阿部太郎)
中日スポーツ