また刺した!阻止率10割。ソフトB“甲斐キャノン”の何がどう凄いのか
高速の足さばきが甲斐キャノンの秘密
「まず肩の強さはズバ抜けていますが、それ以上にいいのがコントロールです。この日の送球は、少し高かったですが、ほとんどが野手のベルト付近より下にコントロールされてボールがシュート回転しない。スライダー回転させることが最悪なのですが、捕球する側もタッチがしやすく、タッチのスピードアップにもつながっています」 強肩プラス、その制球力。しかも回転がいいという。 「タイムを縮めるために、最も重要なボールを捕ってから送球までの動作が非常に速いですね。捕球して、そのままノーステップで左足を前に出して投げるタイプではなく、足を切り替えてワンステップをして投げるタイプです。実は、捕手の捕球してから送球までの速さは、足の動きの速さに比例します。甲斐は、捕球と同時に右足を引き、左足を前に出すという切り替えを行う時に、その軸足となる右足が着くのが速いんです。この右足の着地の速さが、足の速さを生みだすのですが、甲斐はそこを押さえています。足が動くので、ボールが、それた場合の対応力も素晴らしいんです」 甲斐の鉄砲肩ばかりに目が行きがちだが、実は、それを支えているのは、“高速の足さばき”だったのだ。 甲斐の今シーズンの盗塁阻止率.447はリーグトップの数字だが、ベテランの高谷裕亮(36)も.385で2位の阻止率を誇る。今シリーズでも、延長12回引き分けに終わった初戦の9回にしっかりと上本崇司の盗塁を刺している。 里崎氏は、甲斐だけでなく、ソフトバンクのバッテリーの盗塁阻止率の高さを生んでいる背景には、「セ、パの野球観の違いがある」とも見ている。 「セパの盗塁数を比べてみて下さい。セの盗塁王の山田哲人(ヤクルト)が33個、2位の田中広輔(広島)が32個、3位の糸井嘉男(阪神)が22個です。一方、パのタイトルホルダーの西川遥輝(日ハム)が44個、2位の中村奨吾(ロッテ)が39個、3位が源田壮亮(西武)の34個、4位の金子侑司(西武)でも32個です。レベルが違います。どんどん仕掛けてくるという野球に対応するためには、当然、甲斐も、投手陣もスキルアップに必死になりますよ。このセパの機動力に対する意識の違いも影響していると思うんです」 広島のチーム盗塁数95個がセではトップだが、パは西武が132個、ロッテが124個、日ハムが98個、オリックスが97個で、広島がもしパに入ると5位の数字なのだ。 この日も、安部のスタートは若干、遅れていた。30日の第3戦でも、初回の田中の盗塁スタートは遅れたし、7回には、スタートを焦ったのか、牽制につりだされてしまっていた。 ここまで阻止率10割の“甲斐キャノン”が、目に見えぬプレッシャーとなり、広島の本来の盗塁技術に狂いも生じさせてしまっている。 今日1日の第5戦には、両チーム共に中4日でエースの千賀滉大、大瀬良大地をぶつけてきた。“甲斐キャノン”という最高の抑止力を持つソフトバンクが、日本シリーズ本拠地連勝記録を「12」に伸ばして一気に王手をかけるのか、それとも広島が、“機動力包囲網”を突破して再び2勝2敗1分けのタイに戻すのか。シリーズの行方を占う最大の山場となる。