おおらかな時代だから許された? 昭和マンガに登場した「ファミコン」のトンデモ設定
ほぼ『北斗の拳』…ファミコン本体を武器にした主人公
ファミコンが大ヒットして、多くの子供たちがゲームに熱中するなかで、「裏ワザ」が広まることもありました。単なるバグや、開発者が意図的に盛り込んだ裏ワザもありますが、いわゆる「デマ」だったケースも少なくありません。 1980年代に「月刊コロコロコミック」や「小学5年生」(小学館)で連載されたゲームマンガ『ファミコンロッキー』(作:あさいもとゆき)は、実際には存在しない架空のワザが描かれていました。内容はゲームマンガならではの王道展開で、ファミコンロッキーこと「轟勇気(とどろき ゆうき)」がゲームを通じて強敵たちとバトルを繰り広げます。 架空のワザの例を挙げると、『F1レース』(1984年発売)において、勇気が「ゲーム拳・必殺五十連打」を出したことで、車のスピードが音速を超えました。ほかにも『エキサイトバイク』(1984年発売)では、倒れているバイクを踏み台にしてジャンプします。また、『スパルタンX』(1984年発売)では「24周」クリアすると、恋人の「シルビア」が襲いかかってきたり、『ゼビウス』(1982年発売)で1000万点を超えると敵の大群が登場したりなど、実際には存在しない裏ワザや裏設定がいくつも描かれたのです。 当時の子供たちは、本当にある「裏ワザ」だと信じてしまい、条件達成まで険しい道のりながらも、懸命にプレイし続けたこともあったそうです。 「ファミコン本体」を武器として登場させた『最強挙士伝説 ファミコマンドー竜』(作:安田タツ夫)の存在も忘れられません。1986年発売のマンガ雑誌「ファミコミック」(大陸書房)に掲載された作品です。 物語の舞台は、20XX年の核戦争後の世界で、ファミコンゲームの優劣によって厳しい身分制度がしかれていました。そこに登場するのが、左肩にたくさんのファミコンの本体やコントローラーをぶら下げた「ファミコマンド竜」です。竜は、人びとを支配するラスボス「マッド・グロス」と戦います。この設定にピンときた人もいるかもしれません。『北斗の拳』の設定と酷似しているのです。 竜はグロスとの戦いで、大量のファミコンを投げつける「爆裂ファミコン」、高く飛び上がって蹴りを繰り出す「ファミ魂殺法 牙竜乱激打」といったワザを披露し、勝利します。そして竜は、ファミコンゲームの楽しさを伝えるために旅立っていくのでした。ちなみに、作中にはファミコンのゲームをプレイする描写は一度も出てきません。 この『最強挙士伝説 ファミコマンドー竜』は、TV番組『トリビアの泉』でも取り上げられました。同番組によると、『ファミコマンドー竜』は、作者の安田タツ夫さんに出版社から「ファミコンを素材に使ったマンガを描いてほしい」と頼まれため、描くことになったそうです。やはり当時は、マンガのなかに「ファミコン」を登場させるだけで、子供たちから喜ばれたのでしょう。
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