日銀・黒田総裁定例記者会見 金融政策決定会合の結果について(発言全文)
マイナス金利から1カ月、政策の効果は十分出ているのか
幹事社:はい。マイナス金利政策の導入から、ほぼ1カ月がたちまして金利全般が大きく低下しています。その評価といいますか、効果をめぐりましては中には厳しい見方もありまして、総裁としては金利が想定どおりの水準までもう下がって、政策の効果が十分出ているとみていらっしゃるのか、いやまだまだ不十分だというふうにみていらっしゃるのか。金利がさらに下がって一段と効果を発揮する可能性があるというふうにみてらっしゃるのか。その辺りの評価についてお願いいたします。 黒田:ご案内のとおりこのマイナス金利政策というのは、わが国では初めての経験ですので企業や家計の皆さまからいろいろな意見が聞かれているということはよく認識をしております。従いまして今後ともしっかりと説明をしていきたいと思っております。 端的に申し上げまして、このマイナス金利付き量的・質的金融緩和というものは、これまで初期の効果を発揮してきた量的・質的金融緩和を一段と評価するものであります。すなわち実質金利を引き下げることによって、企業や家計の経済活動を刺激して、2%の物価安定の目標を早期に実現することを目的としております。このマイナス金利付き量的・質的金融緩和の導入以降、短期、長期の国債利回りは大幅に低下しておりまして、これを受けて貸し出しの基準となる金利、あるいは住宅ローン金利は、これらははっきりと低下しておりまして、金利面では政策効果はすでに表れていると思います。 今後、その効果が実態経済や物価面にも波及していくものと考えております。その下でマイナス金利付き量的・質的金融緩和についての評価も、ポジティブなものとして定まっていくのではないかというふうに考えております。 幹事社:最後ですが、マイナス金利政策によって預金金利が引き下げられるなど、その影響で個人が資産防衛の意識を強めて、逆にデフレ意識が強まってしまうのではないかという見方もあります。このマイナス金利政策というのが個人の資産運用にどういった影響を及ぼすのか、総裁のご所見をお願いいたします。 黒田:先ほど申し上げたように、貸し出しの基準となる金利、あるいは住宅ローンの金利ははっきりと低下をしております。一方で預金金利も低下しておりますけれども、すでにかなり低い水準にあったために、その低下幅というのは貸出金利に比べますと極めて小幅なものにとどまっております。このようにマイナス金利は、家計部門にとっても全体としてプラスの効果を持つというふうに考えております。 また、もっと一般的に申し上げますと、金融政策の効果については家計部門と金融機関の取引に伴う直接的な収支というだけではなくて、経済全体としての国民所得、国民経済、GDPに与える影響という観点から議論をする必要があると思っております。 この点、量的・質的金融緩和の下で経済物価情勢は大きく改善してきておりまして、企業収益が過去最高水準で推移しておりますし、また労働市場を見ますと失業率が3%台前半まで低下するなど、完全雇用と言えるような状態になっております。 また、労使間の賃金交渉においても、ベースアップが一昨年、20年ぶりに復活したあと、昨年は2年連続で実現しておりますし、こういった雇用、所得環境というのは着実に改善をしております。物価面でも、生鮮食品とエネルギーをのぞく消費者物価の前年比というものは、量的・質的金融緩和の導入前はマイナスだったわけですけれども、2013年の10月にプラスに転じたのち、28カ月連続でプラスを計上しておりまして、最近ではプラス1%を上回る水準まで上昇しております。 先ほど来、申し上げておりますとおり、このマイナス金利付き量的・質的金融緩和というものは、このように景気や物価に対して良い影響、改善をする効果を発揮してきた量的・質的金融緩和をさらに強化するものですので、国民各層にとって幅広くプラスの影響をもたらすものであるというふうに考えております。