「動いて勝負」ジャーメイン良の2得点を生んだ「裏側」。ジュビロ磐田で9戦9得点も「そこにもっとこだわれるか」【コラム】
明治安田J1リーグ第9節、アビスパ福岡対ジュビロ磐田が20日に行われ、2-2の引き分けに終わった。勝利こそ逃したものの、磐田FWジャーメイン良はこの試合で2得点を挙げ、計9得点で得点ランキングトップを走る。ジャーメインはゴールシーンを「話していた通り」と明かした。(取材・文:河治良幸) 【動画】狙い通り! ジャーメイン良の2得点 アビスパ福岡対ジュビロ磐田
●「動いて勝負しないといけない」ゴールにつながった狙い ジュビロ磐田のFWジャーメイン良がアビスパ福岡を相手に2ゴールを決めた。試合の前日に29歳の誕生日を迎えたストライカーは、ここまで8試合で7失点だった堅守を破るという、非常に価値のある2得点。ジャーメインは9試合で9得点として得点ランキングを独走、早くも2桁ゴールにあと1つと迫っている。 1点目は前半30分、磐田の流れるような攻撃からヘッドで叩き込んだ。自陣でボールを奪ったDFリカルド・グラッサの縦パスをMF藤川虎太朗が受けて、さらに縦へボールを送る。ジャーメインが福岡のDF井上聖也と競る形で手前に落とすと、相手陣内まで攻め上がっていたリカルド・グラッサが拾い、右サイドを走るMF松本昌也に素早く展開した。 ジャーメインが連動してゴール前に走ると、ファーサイドで福岡ディフェンスの合間に飛び込み、ダイビングヘッドでゴール左に叩き込んだ。「相手は高さがあったので。(松本とは)“速く”って話し合っていて。いいボールだったので、2人で話していた通り」とジャーメインは振り返る。福岡の3バックが空中戦や競り合いに強いことは周知の通りだが、磐田のスカウティングで、アジリティは優位に立てると伝えられていたという。 「やっぱり相手は高さがあるので、ボックス内を動いて勝負していかないといけない。そこからボールが上がってきた瞬間に、しっかりと捉えられるポイントを見つけて、それを受けてという形でした」 ●2つのゴールに共通するのは… 後半立ち上がりの2点目はストライカーらしいゴールだった。リカルド・グラッサのクリアボールをジャーメインが自陣に降りて落とした流れから、MF藤原健介のクロスにMF平川怜がファーサイドから勢いよくヘッドで合わせるが、GK村上昌謙に弾かれてしまう。しかし、手前に溢れてきたボールをジャーメインが逃さずに、相手ディフェンスより一瞬早く、スライディング気味に左足を振り抜いた。 「ちょっと遅れてでしたけど、いいボールが(藤原)健介から上がって。(平川)怜のところで決まるかなと思ったんですけど、しっかり枠の中にミートできてよかった」 2つのゴールに共通するのは1つ起点を作るプレーからゴール前に走り込んでいることだ。ここ数試合は190cmのFWマテウス・ペイショットと2トップを組んでいたが、この日は藤川と縦に並ぶような形。ゴールシーンのように起点になる動きから、ゴール前でフィニッシュに絡むという一連の流れを強くイメージしていたという。182cmと上背があり、スピードを武器とするのは以前からだが、川崎フロンターレ戦の4得点など、J1で得点を重ねる中で得た自信が、特長を生かした迷いのないフィニッシュにつながっているように見える。 ジャーメインの2得点でリードを広げた磐田だったが、FWウェリントンを投入した福岡に、シャハブ・ザヘディの2ゴールで追いつかれてしまった。2つ目の失点は自陣でのパスミスからだったが、ジャーメインは「狙い通りのゲームの進め方をできた中で、1点目を取られるのが少し早かった」と悔やんだ。振り返れば2得点を決めた後にも、ペナルティエリア内でボールを受けるなど、ハットトリックとなる3点目を決めそうな惜しいシーンはあった。 ●ジュビロ磐田が“勝たないといけないゲーム” 「結果的に3点目、欲を出して取りに行こうと思えば取りに行ける雰囲気は正直、1失点するまではあったので。そこにもっとこだわれるかだと思うし、結果的に3点目を取れずに、勝ち点3が1になってるので」 そう振り返るジャーメインは“勝たないといけないゲーム”だったことを前置きしながら「監督も言ってましたけど、アウェイでタイトル獲っているチームに勝ち点1取れたことはポジティブに、来週のゲームを迎えたい」と前向きに語る。ここまでジャーメインが得点を決めた試合は4得点の川崎戦を含めて2勝1分1敗となっているが、先に2点をリードされてから1点返したガンバ大阪戦のときも6本のシュートを記録しながら、もう1点を決めきれずに勝ち点を逃したことを反省点にあげていた。 現在、得点ランキングのトップに立っていることに関しては意識していないというが、2得点を決めた第6節の新潟戦後には「シーズンが半分終わった時に、まだ1位であれば改めて質問してください」と笑いながら語っていた。しかしながら、まだシーズンの4分の1にも満たない段階で、2桁得点まであと1つのところまで迫っているのは特筆に値する。改めて、その事実について聞くとジャーメインはこう回答してきた。 「今9点なんですけど、やっぱり勝ち点に繋がらないと意味がないので。今日は勝ち点につながる点が取れた。これを続けていくことが、最終的にそういう得点のトップに立っているかもしれないし、それを自分はやり続けたい」 昨シーズンはJ2で9得点だったジャーメイン。ここからJ1の舞台で、どれだけ得点を積み重ねていくのか楽しみだが、自分のゴールで磐田に勝利をもたらすという使命感が、ここからの支えになっていくことは間違いないだろう。 (取材・文:河治良幸)