【名手の名言】アーノルド・パーマー「ちょっとした見栄が、ゲームを台なしにする」
レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。今回は“アーニーズアーミー”という熱狂的ファンを生んだアーノルド・パーマーの言葉をご紹介!
「ちょっとした見栄が、ゲームを台なしにする」
説明は全く不要なほどの言葉であろう。しかし、あのパーマーがこの言葉を残しているところに意義がある。パーマーはいうまでもなく、現代の米プロゴルフ界を今日の隆盛に導いた第一人者である。偉大なプレーヤーは何人もいるが、人気という点では間違いなく史上No.1だった。 ストロークプレーにおいてのゴルフはいかにミスを少なくするか、といういわば保守的な要素を色濃くもつスポーツである。 ところがパーマーは「攻撃=チャージ」という概念を持ち込み、ゴルフをエキサイティングにして、『アーニーズアーミー』という熱狂的なファンを生み、米国のヒーローになった。どんな難しい位置からもピンを狙い、それが成功すると拍手喝采、我らがアーニーはやってくれたぞ! ってなものだ。 しかし、ゴルフの本質の半分は先ほども触れたが、「守る」こと。その後に現れたジャック・ニクラスが攻守を兼ね備えた典型で、帝王と呼ばれた。ともかく、ゴルフはミスを少なくするゲームだから、安全優先がスコアメークには欠かせない一大要素であることは紛れもない事実。 その点でいえば、見栄は最大の敵なのである。アベレージゴルファーにおいてもこれは同じ。腕前も省みずパー3などでも同伴競技者より長いクラブは持ちたがらないし、レイアップせずにクリークの餌食となったりするのは日常茶飯事。 ゴルファーならきっと経験があることだろうし、パーマーもまた、守るべきところを、ギャラリーの熱い願望にも似た声援に押されて、チャージし、敗れたことは何度もあったに違いない。そのためか、グランドスラマーには至っていない。 しかし、記録より、記憶には誰より残っているプレーヤー。ゴルフの本質と、プロスポーツの人気という狭間に立つパーマーから出た言葉だからこそ、味わい深いのである。 アーノルド・パーマー(1929~2016年) ウェイクフォレスト大学在学中に全米アマ優勝。PGAツアーに参加。60勝を挙げている。シニアで獲得したタイトルは10勝。ツアーでの勝利のなかには全米オープン、マスターズ、全英オープンのメジャータイトルも含まれているが、全米プロだけは2位が3回あるものの優勝はなく、グランドスラマーにはなっていない。しかし、プロ入りから一貫して、チャージ・スタイルは変わらず、圧倒的人気を呼び、国民的ヒーローとなった。ゴルフを米国のメジャースポーツの地位へと引き上げる原動力となった。