閉園の蓼科保養学園へ40年以上続いた善意 贈られた図書カードを小学校で活用 長野県
長野県諏訪市が同県茅野市北山で運営していた児童福祉施設「蓼科保養学園」に毎月、匿名で贈られ続けた図書カード(図書券)。2022年度末に閉園するまで40年以上続き、図書室に置く児童書や絵本の購入に充てられてきた。差出人はいまも不明だが、市は「子どもたちのために」という意向をくみ、閉園によって使用できなかったカードを市内小学校で有効活用することを決めた。長年の善意に改めて感謝している。 学園に毎月、図書券が届くようになったのは1970年代後半から。封筒には宛先が記入されているだけで、名前も手紙もない。毎回1000円分の図書券または図書カードが入っていた。唯一の手掛かりとなるのが千葉県内の消印だったが、市と学園は感謝を伝えたいと思いつつも、相手の意向をくんで進んで探すことはしなかった。 学園は4期制で運営し、1期(約3カ月)ごと小学5年生の希望者を受け入れ。親元を離れて共同生活を送り、自然の中での学習や運動、体験で心身を強くした。図書室は子どもたちが好きな場所の一つで、図書券やカードで本を購入する際には児童のリクエストも参考にした。 コロナ禍で休園した時期も寄贈は続いた。閉園が迫った22年12月、初めて手紙が同封されていた。「閉園をニュースで知り、寂しいです。(中略)親子2代でお世話になりました。冬の3カ月余。いまでもその時の思い出が出てきます。私の人生にとって貴重な体験でした」。学園の再開を願う言葉と、閉園となる3月まで贈り続けるというメッセージが添えられていた。 こども課によると、閉園に伴って使われなかったり残額があったりしたカードは計51枚(約4万9千円分)で、市教育委員会を通じて6小学校に届ける。「長年の善意で学園図書室の充実を図ることができた」と同課。寄贈者の思いを引き続き大切にし、「学校図書館の充実に有効活用したい」としている。