衆院選、ところで区割りはどうなった? けん制、ちゃぶ台返し…議論白熱も結局「1票の格差」はほぼ2倍 「AIがやればよかった?」
今秋なのか、それとも来年以降なのか、さまざまな観測が飛び交う次期衆院選。政界勢力図を決める政治決戦となるが、実はもう一つ、注目点がある。小選挙区定数「10増10減」を反映した、選挙区の新たな区割りが初めて適用されることだ。対象となったのは15の都県。定数配分が大きく変わるだけに、与野党の選挙戦略を大きく左右するのは間違いない。 区割りを改定したのは、2020年国勢調査の人口に基づき、「1票の格差」を2倍未満に縮小するためだ。格差が2倍だと、ある選挙区の有権者が投じた1票が、別の選挙区では「0・5票」の重みにしかならないことを意味する。不平等であり、憲法が求める「1票の価値の平等」の観点から望ましくなく、民意もゆがめられかねない。 ただ、新たな区割りでも、たとえば宮城2区は鳥取2区の1・993倍となるなど、2倍に迫る選挙区が少なくない。正直「もっと縮小できなかったのか」と疑問を感じる。
理由を探ろうと、新区割りを作成した衆院選挙区画定審議会(区割り審、会長・川人貞史東大名誉教授、7人)の議事録を情報公開請求で入手した。読み進めると、格差縮小優先と単純に割り切れず、地域の一体性確保や経済・交通などにどう配慮するか、対立とジレンマの連続だった議論の過程が鮮明に浮かび上がってきた。(共同通信=中田良太、出川智史) ▽「AIに区割りをやってもらえばいい」 区割り審の議論が最もヒートアップしたのは、宮城と滋賀だった。(※なお議事録は発言者名が黒塗りで開示されており、発言はどの委員のものかは特定できていない) 「イレギュラーではありますが、新しい提案をさせてほしい」。2022年5月30日の区割り審会合。委員の一人が突然、こう切り出すと、出席者の多くは驚いた表情を浮かべた。 この委員が提起したのは、既に決着した宮城の区割り案の見直し。いったんまとまった案を覆そうと新案を持ち出すのは「極めて異例」(総務省筋)の事態だ。岸田文雄首相に勧告する区割り案の内容は固まっており、同日に委員が集まったのも文言の最終調整が目的。勧告時期が6月に迫る中、悠長に議論をやり直す余裕はなかった。「ちゃぶ台返しだ」。関係者の目にはそう映った。