錦織圭も「また組みたいです!」と高評価。ホープ坂本怜が大先輩とのダブルスで見せたスターの資質<SMASH>
実際に坂本は、「最初のサービスゲームの時は、真っ白でした」と試合後に打ち明ける。そこから徐々に「グレーになっていった」というのは、坂本節。実際に彼のプレーを見れば、試合が進むにつれ硬さがほぐれ、持ち味を発揮できたのは間違いない。 時速200キロを計測するサービスは、錦織をして「これだけサーブが良い選手と組むことも少ないので、すごく楽だった」と言わせしめるほど。ネット際での動きも、「デカい割にはリアクションが良い」と、錦織節をまじえつつ賛辞を送る。 勝敗の懸かった10ポイントマッチタイブレークでは、決まったかに見えた相手の鋭角ショットを、長い手を目いっぱい伸ばしてスライスで返すスーパープレーも飛び出した。耳に手を当てファンの歓声を求める姿は、スターの資質十分だ。 もちろん、その伸びやかなプレーを引き出したのは、錦織の抜群の安定感と、ボールと戯れるかのような姿にあるのも、間違いないだろう。さりげなく見せる芸術的ハーフボレーや、軽やかに跳ね豪快に決めるバックボレーは、観客の大歓声を生む。 ファンの後押しを背にも受け、錦織/坂本ペアは第1シード相手に大健闘。7-6(6)、4-6、[6-10]の惜敗ながら、観客の満足度は間違いなく勝ち取った。それはプロデビュー戦の坂本にとって、掛け替えのない財産となっただろう。 試合後の会見では、メディアの前で語る姿もそつない錦織に対し、坂本は錦織からの賛辞を聞きながら、こそばゆそうに顔を歪める場面も。「錦織さんからコート上でも優しい言葉をかけてもらえた」と、殊勝に語りもした。 その貫録の錦織も思わず腰砕けの表情を見せたのが、坂本に「錦織から具体的にはどんな言葉を掛けられたのか?」との問いが向けられた時。 しばし首をかしげて黙しながら、やっと絞り出した答えが、「ナイスサーブ……とか」。思わず「バカでも言えるじゃん!?」と噴き出す錦織。 坂本が「また組んでいただきたいです」と言えば、最後は会見室の空気に押し切られたかのように、「また組みたいです!」と錦織も声を張る。 オフコートでも絶妙のケミカルを見せた、新旧スターの共演だった。 取材・文●内田暁