神戸編がスタートした『おむすび』第8週、平穏な日常に散りばめられた“教え”に気づけるか?
現在放送中の連続テレビ小説『おむすび』(総合・月曜~土曜8時ほか)。11月18日(月)~22日(金)放送の第8週「さよなら糸島 ただいま神戸」では、結(橋本環奈)が栄養の専門学校に進学。新たな環境に戸惑いつつも、少しずつ神戸の生活に慣れていく様子が描かれた。 【写真】神戸編がスタートした『おむすび』第8週【5点】 第8週で印象に残ったのは、一見“普通”に見える日常が一つ一つ丁寧に表現されていることだ。家族で「引っ越し蕎麦を食べよう」とはしゃぐ場面や、ヘアサロン ヨネダに商店街の面々が集まる場面、結が専門学校での理想と現実に悩む場面…。ここまで結たちが歩んできた過去を知っている視聴者ならば、この日常がいかに“特別”なものかが分かるはずだ。 「ギャルメイクを指摘された」「班の子と気が合わない」という悩みは、言ってしまえば平穏な日常が成り立っているからこその悩みだ。同じ悩んでいる姿でも、糸島で「やりたいことがない」「失うのが怖くて正面から向き合えない」と悩んでいたときよりもキラキラと輝いてみえる。 結たちの日常の中には、大小さまざまな“教え”がさりげなく散りばめられている。第40回で登場したスイスチャードのエピソードもその一つで、馴染みのない名前やピンク色の茎を見てなんとなく避けていたけれど…実は小松菜と似た味わいで値段もそんなに変わらない!という新発見を視聴者に与えてくれた。 そしてこれは、カタカナのあだ名や派手な見た目を毛嫌いしていたけれど、実際はとても真面目でいい子だった…と、ハギャレンたちから学んだ「人を見た目で判断してはいけない」という教えにもつながっているのだ。 そこに「それでもTPOは考えないとね」と釘を刺してきたのが、専門学校でのエピソードだ。つけまつげにラメのアイシャドウ、長いネイルで登校した結は、初日から「不適切」の判子を押されてしまった。見積もりが甘く業界から洗礼を受ける、というシーンは過去の朝ドラでも何度も登場していると思うが、それが技術や心持ちではなく見た目だったことがポイントだ。 ここまで散々「見た目で判断してはいけない」「好きな見た目を貫くって素敵」と打ち出してきていたからこそ、「栄養の専門学校には相応しくない」というパンチの威力がより大きく感じられた。一つの教えを色んな角度から繰り返し見せることで、あらゆるものの多面性を表現しているのだろう。何重にも何層にもなっている“教え”に、視聴者がいかに気づけるかも試されているような気もしてくる。 怒られたり失敗したりしながらも平凡な結の日常。その日常をいい意味で変える人物がいるとするならば、やはり姉の歩(仲里依紗)だろう。糸島を出た後は世界各国を飛び回り、仕事はどうなっているのか、住まいはどうなっているのか全く分からない状態だったが、第40回の最後には「ただいま神戸。帰ってきたよ~!」と叫ぶ歩の姿があった。 日常を過ごしつつも、まだ神戸には向き合わなければいけないことが残っている。神戸に戻ってきた歩はもちろん、結も心のどこかで気付いているはずだ。結の日常は歩によって、そして再び真紀ちゃんと向き合うことでどう変化していくのか。毎朝テレビで朝ドラを見られる、という平和な日常に感謝しながら来週も結の日常を見届けたいと思う。
音月 りお