認知症の徘徊で何度も警察のお世話になる「年金月7万円の70代母」。40代居酒屋バイトの息子は結婚間近で援助できず…「老人ホーム」へ入れるための最後の手段【遺品整理のプロが助言】
おひとりさまの老後において、介護は非常に大きな問題でしょう。介護が必要な状態となってから施設を探そうとしても、入居が困難になってしまうケースは少なくありません。本記事では、生前整理・遺品整理のプロの山村秀炯氏による著書『老後ひとり暮らしの壁 身近に頼る人がいない人のための解決策』(アスコム)から、介護施設探しに難航するおひとりさまの事例を紹介します。 【早見表】年金に頼らず「1人で120歳まで生きる」ための貯蓄額
気性の荒さが施設探しのネックに
70代の男性、田村さん(仮名)は要介護1の認定です。 田村さんは認知症が原因で感情の起伏が激しく、機嫌が悪くなると机を叩いて威嚇したり、暴言を吐いたりするようになっていました。子どもがいるのですが、精神的な不安定さから距離を置かれていました。一時は精神病院に入院していたものの、退院後に行き先がなくなり、施設を探し始めます。 ところが、収入が月に13万円程度の年金しかなかったことや、ときに暴力的な行動が見られてしまうことがネックになり、いくつもの老人ホームに入居を拒否されてしまいます。 老人ホームは共同生活の場です。他の入居者に危害を加える危険があると判断された場合、入居は難しくなります。本人も望まない病気が原因で、いざ介護が必要になっても老人ホームに入ることさえ困難になるケースがあるのです。 田村さんは時間はかかったものの、精神病ケアに積極的に取り組んでいる施設に入居できました。ただ、入居から数か月経っても家族からの面会はありませんでした。
たったひとりの支援者をなくして生活が破綻
70代後半の男性、飯田さん(仮名)は軽度の認知症を患っており要介護2、車いすで生活していました。妻と子どもがいましたが、いまは独り身。さらに50代で仕事中に大きな事故にあって脳にダメージを受け、それ以降はずっと自宅にいる生活です。 唯一の頼れる身寄りは姉で、施設に入るまでの住まいも、姉が購入してくれた分譲マンションでした。しかしそんな姉も4年ほど前に他界。姉の夫は健在ですが、保証人などにもなりたくないと基本的に距離を置かれている関係です。 それどころか、飯田さんが住んでいる姉の残したマンションを早く売りたいと、勝手に荷物を捨てたりして追い出そうとする有様でした。 飯田さんはたったひとりの支援者を失い、生活が破綻してしまいます。室内には悪臭も漂い、とてもひとりで生活できる状態ではありません。そこで役所(いきいき支援センター)の担当者から私に依頼があり、老人ホーム探しに乗り出しました。 さいわい、姉が飯田さんのために600万円程のお金を残してくれていたことと、昔の労災見舞金と年金で毎月25万円程の収入があることで、お金の面では不自由はありませんでした。 問題は、実際に施設を探したり、見学したり、身元保証会社とやり取りしてくれたりする身内がいないことです。役所や業者に動いてもらわないといけないので、手間もお金もかかります。 飯田さんは身元保証会社に150万円、老人ホームへ150万円+月々15万円程度のお金を工面することができましたが、そう簡単にいかない人も少なくないでしょう。 飯田さん本人はいつ死んでもいいと考えているようです。預貯金などの財産があるので別れた子どもに譲りたい意向があるそうですが、子どもの所在はわかりません。役所の方が探すと言っていましたが、意向どおりになるかどうかは不明です。
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