Japan(2月7日)
英和辞典で「Japan」は日本。最初が小文字の「japan」は漆、漆器とある。わが国と漆の縁は切っても切れない。深い歴史がにじむ▼大航海時代の16世紀、多くの西洋人が日本を目指した。極東の小さな島国で作られ、美と実用性を兼ね備えた、その存在に驚き、魅了されたようだ。この国の特産品として漆器をジャパンと呼んだ(中室勝郎著「なぜ、日本はジャパンと呼ばれたか」)。フランス革命の悲劇の王妃マリー・アントワネットも熱烈な愛好者の一人だった。漆の神秘的な美しさは、欧州の華やかな社交場を彩っていたに違いない▼地域の宝の輪島塗が、能登半島地震で窮地に陥っている。工房は崩れ、小売店が並ぶ朝市は焼失した。組合は復興に向けた支援金をホームページで募っている。〈職人魂が震災のショックで失われないうちに事業所や仕事場の再建に繋[つな]げたい〉。漆の技を守り抜く。ひたむきな気持ちが胸を打つ▼浪江町の大堀相馬焼は震災に遭っても、伝統工芸の命を未来につないだ。絶やしてはならないとの県民の思いを受けて。輪島のjapanも多くの人の支えがあってこそ、前へ進める。大文字の出番だ。今こそ、オールJapanで。<2024・2・7>