最終話直前!ドラマ『大奥』20話を振り返る
他人同士が育む 家族のような関係
天璋院(福士蒼汰)が言う通り、「他人同士が肩を寄せ合い、ひとつ屋根の下に暮らし」ている大奥。家茂、親子、瀧山(古川雄大)、天璋院。全員他人で、それぞれの事情でここに連れてこられた。家茂と親子は同性同士だから夫婦にはなれないし、子どもを生むことはできない。けれども亀之助という養子を受け入れる。また一人、血の繋がらない“家族”が増えた。彼らの姿を見ていると、家を継いで15代続いてきた徳川家のなかにおいて、血の繋がりなんてどれほどの意味があるのだろうと思ってしまう。 体調が優れないなか、慶喜の尻拭いで繰り返し上洛させられることとなった家茂は、とうとう京都で命を落としてしまう。おつきの志摩(中村アン)は、親子に家茂の最期を話す際、家茂の願い通り「心安らかに旅立った」と言おうとして、思わず本当のことを伝える。「大奥に帰りたい」「親子さまに会いたい」と言って死んでいった家茂。原作では「江戸城に帰りたい」だったが、ドラマの「大奥」という言葉からは、家茂が愛していたちいさなコミュニティ、血の繋がらない家族たちが思い浮かんだ。 家茂と親子は、女性同士だった。お互いに相手が誰よりも大切な存在だった。恋のようには見えなかった。まだ若い二人が、大きな運命に揺られながら身を寄せ合って生きていたようだった。 家茂がかつて「とりかへばや遊び」をやろうと提案し、お土産として用意していた袿(うちき、女性用の上着)を羽織った親子がつぶやく。 「徳川とかこの国とか、そんなんどうでもようない? そんなんは争うのが大好きな腐れ男どもにやらせて私らきれいなもん着て、お茶飲んで、カステラ食べてたらそれでようない?」 この親子のセリフも、ドラマオリジナルのものだ。将軍として、男のなりで「帝をお守りする」と伝えるためにはるばる京都まで行った家茂。男でなかったばかりにいないものとして扱われ、やがて男に扮して婿入りすることになった親子。この世界の人々は、何人もの尊い命の犠牲のうえに病を駆逐し、結果男が増えた。やがて男が中心となった時代で、女将軍は最後まで国のため、民のためを思って生きた。家茂も、「きれいなもん着て、お茶飲んで、カステラ食べて」ることもできたはずだ。それでも、民のために、戦を避けるために命をかけた。そのせいで、大切な人のそばにいられなかった。