メッシが去り、ベリンガムがやって来た。元マドリー指揮官が占う“今後のバロンドール”【現地発コラム】
メッシは「アディオス」を告げているようでもあった
バロンドールは、サッカーがその“らしさ”を失っていることを日に日に実証している。遺物のようにトロフィーを監視する警察官、アカデミー賞のオスカーを受け取る俳優のような格好をした選手たち、その金銭的なうまみ目当てにビジネスの世界から首を突っ込む侵入者たち...。 【動画】「とんでもないシュート」「恐ろしい」と反響!クラシコで決めたベリンガムの衝撃ミドル弾 豪華絢爛な式典は、サッカーの社会における立ち位置が高まっていることを教えてくれる。しかし歴史的には、ごく最近まで、庶民スポーツとして認識される中でも、女性の存在を忘れられていたという異常な一面も持ち合わせていた。今なおリオネル・メッシの前座役に終始していたアイタナ・ボンマティ(バルセロナ)は、しかしながら、知性、献身性、そしてその才能に裏打ちされた場を支配する力を持ち合わせ、同世代の選手たちとともにパイオニアとしての地位を確立している。 そんな中、メッシは8度目のバロンドールを受賞した。出席者はスタンディング・オベーションでその偉大な功績を称えたが、過去の振り返りに重きが置かれたスピーチはやりたいことを全てやり切ったというリラックス感が漂い、暗に「アディオス」を告げているようでもあった。 一方、「オラ」という言葉をその存在だけで暗黙のうちに発していたのがジュード・ベリンガムだ。記録的なスピードでレアル・マドリーの王様の称号を手にした大器は、受賞したばかりのゴールデンボーイ賞に飽き足らず、年長者たちのテーブルと一緒に座ることを要求している。 クラシコでも、塹壕から出てきた兵士のような顔つきで、身体を投げ出すことをいとわないガビの激しい密着マークに遭う中、決して冷静さを失わず、デートに遅刻してきたパートナーに対応するように、自身の時間を待ち続けた。 ベリンガムのような選手は物事を測る視点が他とは異なる。1秒、1メートルと相手のわずかな集中力の欠如を突いてゴラッソを叩き込み、試合の流れを変えてしまう。そしてそのまま1―1で試合終了かと思われた後半ロスタイムに、何かを忘れたかのように試合に戻り、彼にしか見えない隙間をすり抜け、2点目を決めた。 空いたスペースを見つける能力に長けたベリンガムがバロンドールの式典で、今後数年間、自身が登壇するスペースを探していたとしても不思議はない。笑顔のベリンガムの傍ら、キリアン・エムバペは寂しそうな表情を浮かべていた。フランス人は気を付けなければならない。バロンドールはメランコリックな人間に授与されるものではないからだ。
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