常にトイレが気になって…「人生で4~5回漏らしました」 “バレないパンツ”を開発した難病社長の切実な思い
「発症した日はわんわん泣きました」しかし……
現在49歳の洞本氏が潰瘍性大腸炎を発症したのは、23歳の時だった。京都を中心に展開する書店チェーン「ふたば書房」の三代目として生まれた洞本氏が、関西のとある百貨店にテナントで入っている家業の売り場で働いていたときのことだ。当時の売り場フロア統括者から、いつしか強く当たられ始めたという。 「朝礼のとき、みんなの前で『洞本みたいになったらダメだぞ!』と言われだし、ショックを受けていました。ですが、僕がフロア統括者に突っかかってトラブルを起こせば、家業の書店と百貨店の関係が大変なことになる。そう思い、日々グッとこらえて仕事に励みました」 そこで、自分なりの対策として気付いたのが、一言も文句を言われない完璧な仕事をしようでした。洞本氏は朝一番にエスカレーターの前に立ちお客様に挨拶をする、誰よりも丁寧に仕事をするといった行動を徹底した。その結果、フロア統括者から認められ出したのか、徐々に態度も軟化していったという。 洞本氏が潰瘍性大腸炎を発症したのは、そのタイミングだった。 「いつものように勤務していたある日、トイレで用を足すと便器が血の海だったのです。急いで病院に行き検査を受けると、直腸炎型(肛門に近い直腸のみに炎症が認められる型)の潰瘍性大腸炎であることがわかりました。23歳のいい大人でしたが、その日は、なぜ自分が難病にならなければいけないのかと、わんわん泣きました」(洞本氏) 潰瘍性大腸炎の原因は分かっていないものの、フロア統括者からの叱責と、仕事に励みすぎた疲れがストレスとなって、発症の引き金になったのかもしれない。だが、洞本氏は「病気の発症は宿命だったのだと思います。フロア統括者に全く恨みはなく、むしろ今の自分があるのは、このフロア統括者の教えのおかげです」と笑う。 「その時、学んだのが「先義後利」という言葉でした。中国の儒学の祖の一人、荀子の栄辱編の中にある『義を先にして利を後にする者は栄える』から引用した言葉です。ビジネスに当てはめると、『企業の利益よりも先にお客様への義を貫く』、つまり『お客様第一主義』『社会への貢献』ということになります。OMAPANを含め、僕は今まで7個ほどビジネスをしてきましたが、『先義後利』の精神に則ったところ、ほぼ全事業において失敗はしませんでした」(洞本氏)