政権3年目、正念場で「結果示す」 岸田文雄首相インタビュー
安倍派の影響力低下の影響は
――自民党派閥による政治資金規正法違反事件で、近年、外交・安全保障の分野で保守・タカ派的な政策を牽引してきた安倍派(清和政策研究会)の影響力の低下が指摘されています。ハト派と言われる宏池会(岸田派)の会長を務めてきた岸田総理の政策に影響はありますか。 安倍晋三元総理が残された「外交遺産」は、多くの国々から共通の考え方として理解され、受け入れられ、大事にされていると改めて感じています。「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)をはじめとする安倍政権時代の外交遺産は、タカ派かハト派かという立場を超えて、日本にとって大きな財産です。私もこの外交遺産をしっかり継承し、大事にしながら、その土台の上に立って、日本外交の明日を考えていかなければならないと思っています。 引き続き日本は厳しい安全保障環境の中にあります。こうした認識のもと、私自身、政権を担ってから国家安全保障戦略を新たに取りまとめ、防衛力の抜本的強化について決断を行い、積極的な外交を進めてきました。激動する国際社会において責任ある役割を果たせるよう、日本外交をリードしていきたいと思います。 ――派閥の理念や伝統は現実の外交とは別ということでしょうか。 外交、そして国民の安全・安心を守るという点においては、理念ももちろん大事ですが、現実としてどう対応するかという判断が求められます。このバランスが大事だと思います。
選挙イヤーの首脳外交
――今年は世界各国で重要な選挙が相次ぎ、11月のアメリカ大統領選挙ではドナルド・トランプ前大統領が再登板する可能性も指摘されます。次期アメリカ大統領との関係作りをどう進めますか。 主要国での選挙の中で最も注目すべきはアメリカの大統領選挙だと私も思います。誰が勝つかを私の立場から言うのは控えますが、日米が双方にとって重要な同盟関係にあるという認識は、選挙がどんな結果になっても不変であると信じています。アメリカの国内政治を注視してはいますが、日本の外交姿勢は変わりません。外交の土台となる人脈作りに関しては、新たに任命した山田重夫駐米大使を筆頭に新体制となった現地の大使館を中心に努力を続けます。 ――2016年アメリカ大統領選挙直後には当時の安倍首相が訪米し、当選したトランプ氏と異例の会談に臨みました。来年1月の大統領就任式を待たずに訪米して、次期大統領と会談することもありえますか。 次期大統領が誰になるのか今はまったくわかりませんので、具体的なことは何も考えていません。 ――安倍・トランプ両氏の個人的な関係は世界の注目を集めました。関係の近い外国首脳はいますか。 そうですね。私も人間ですから正直、合う、合わないはあります(笑)。ここで具体的なことを言うと差し支えがありますので、あえて言わないようにしています。 ただ、さきほども外交は人と人との付き合いだと申しましたが、やはり人間は深く付き合えば付き合うほど、いろいろな面がわかってくるし、魅力も見えてくる。最初にお会いした印象で合う、合わないがあったとしても、一方的に決めつけるのはいかがなものかとも思います。好き嫌いをはっきりさせることには慎重でなくてはいけない、というのが私の考えです。 (後略) 岸田文雄〔きしだふみお〕 1957年生まれ。早稲田大学卒業後、日本長期信用銀行入行。議員秘書を経て、93年衆議院議員初当選。以来、連続9期選挙区当選。文部科学副大臣、内閣府特命担当大臣、外務大臣などを歴任。2021年に第100代内閣総理大臣に就任。