レンタカーに「有償運送車両」のステッカーを取り付ける協議会のメンバー（広島県庄原市で）

　広島県庄原市で夜間の移動手段を確保するため、予約制乗り合いバス運行の実証実験が19日に始まる。備北交通（本社・庄原市）が社有車とレンタカーの2台で取り組み、12月13日までの期間中、木、金曜日に走らせる。中国運輸局によると過疎地の交通網維持のため、バス事業者が自家用車で有償運送するのは全国初という。（元永達夫）

　庄原市では今年5月から、市内のタクシー業者が人手不足などで午後8時以降の営業を休止。飲食店からの帰宅や夜間の通院などが困難になり、市民生活に影響が出ていた。

　庄原商工会議所などのメンバーで地域の公共交通や移動サービスについて検討する協議会が、一般ドライバーが自家用車で有償運送を担う夜間デマンドバスを計画。実験は国の補助金も使い、備北交通の車両（乗客8人）とレンタカー（同6人）の2台で運行する。運転や運行補助は、備北交通と契約を交わした商議所職員ら7人が務める。

　JR備後庄原駅前を起点に、山内・七塚や板橋・実留など5方面に向かうコースと、庄原市中心部を巡るコースがあり、発車時間は午後8時から同10時40分までの5便。電話による事前予約制（0824・74・6464）で、利用の5日前から40分前まで可能。料金は距離に応じて500～3000円で、現金のみの前払い。

　18日には同社で、運転などを担う商議所職員ら向けに安全運行に関する研修があった。実際に使用する白ナンバーのレンタカーに「有償運送車両」の表示を取り付け、安全にドアを開閉する手順などを確認した。商議所の平田貴則経営指導員は「街の灯を消してはいけないという市民の思いを守りたい。人の流れを維持し、地域経済の活性化を図りたい」と話す。

　実証実験の期間中、利用者に利便性や料金設定などの満足度を聞き取り調査。実験終了後に改善点などに検討を加え、事業としての継続を目指す。