中古屋にも並ぶ、謎の「名前入り」ファミコンカセット 熱意あるコレクターも…?
「紛失、借りパク」を防ぐために流行した?
1983年に発売され、2023年に40周年を迎えた『ファミリーコンピュータ(以下、ファミコン)』は、国内外の多くのユーザーを熱中させた任天堂の家庭用ゲーム機です。豊富なゲームタイトルがリリースされたこともあり、最近はコレクターからも多くの注目を集めています。 【画像】「えっ… 名前欄もあった?」これが味わい深い「名前入りファミコンカセット」実例です(7枚) 多くの訪日観光客で賑わう東京・秋葉原の中古ゲーム販売店「スーパーポテト秋葉原店」には、連日多くの観光客が詰めかけています。店内に並ぶファミコンカセットを手にとると、明らかに子供の字で名前が書かれたカセットに出会うことがあります。なかには、裏側に名前を記入する欄が印刷されたカセットも見られます。当時のメーカーに、「カセットは子供の持ち物だから」と考えた人がいたのかもしれません。 カセットの持ち主がペンで直接名前を書く行為。これは、これはファミコン世代にとって「あるある」のひとつでした。子供時代にファミコンを遊んでいた人のなかには、実際に名前を書いていた方や、そのような名前入りカセットを実際に見たことがある方も多いでしょう。 これには、当時の子供たちの間でカセットの貸し借りが頻繁に行われていた……という背景があります。当時のカセットは子供にとってはきわめて高価で、小遣いをためて買った貴重なカセットを友達に貸した場合に、それが「誰のものか」をハッキリさせるために、名前の記入がよく行われていました。 あくまで一説ですが、カセットの貸し借りの末、持ち主に返ってこないという事例が多発したことでPTAでも問題になり、解決策として「カセットに持ち主の名前を書く」行為が広まったともいわれています。SNSでも、「名前書いてたけど、平気で友達に借りパクされた」「周りのほとんどは名前を書いてて、それを譲り受けた時は引き継ぐ感覚が強かった」といった思い出話が投稿されています。 実は、海外版ファミコン「Nintendo Entertainment System(NES)」が1985年に発売された北米地域でも、カセット本体に名前を書くユーザーはいたようです。日本だけでなく、欧米でも同じような行為が行われていたと思うと、感慨深いものがあります。 また、ファミコンカセットのコレクターのなかには、「名前入りカセット」だけを収集する珍しい人たちもいます。それは、2024年3月現在5人のメンバーで運営されている「名前入りカセット博物館」という非営利団体です。 公式サイトには、「思い出のカセットをもう一度、持ち主の手に帰したい!」「このような試みに賛同してくれた仲間と共にこの博物館を立ち上げました」という館長の思いが綴られており、かつての持ち主が名乗り出た場合は、所定の手続きを経て返却するといいます。現在は900本あまりの名前入りカセットが登録・展示されており、それぞれに詰まったドラマに想像がふくらみます。