背筋凍る、33歳俳優の怒る姿にゾクっ……道長の世の始まり、伊周の終わり|大河ドラマ『光る君へ』第20回
一条天皇と定子、そしてききょうの思い
伊周の行いにより、定子は実家である二条北宮に帰ることとなる。 一度は道長の手引きで内裏に戻り、兄と弟の罪を軽くしてもらえるよう頭を下げたが、それも叶わなかった。 「お健やかに」と立ち去る定子。そんな定子を呼び止め、抱きしめる一条天皇。個人的には一条天皇と定子の仲睦まじい様子が好きなので、何をしてくれているのだ、伊周! という思いが強い。 伊周は除目で大宰権帥への降格が言い渡されたが(隆家は出雲権守)、それに応じる様子も見せない。実家の、それも定子のそばで絶対にどこにも行かないとダダをこねる。なかなか動こうとしない伊周と隆家にしびれを切らし、実資(秋山竜次)が検非違使を引き連れ乗り込んでくる。 その様子をこっそりと見ていたのがききょう(ファーストサマーウイカ)とまひろ(吉高由里子)だ。ききょうは暇を出されていたが、定子のことが心配でたまらなかった。だからまひろを巻き込んで、二条北宮へと忍び込む。 彼女たちの目の前で繰り広げられていたのは伊周の無様な姿。そして定子が刀で自らの髪を切る……という衝撃的なシーンだった。 木の枝を両手に持って隠れるききょうたちの姿はコミカルだが、それだけに目の前で起こっている出来事のシビアさが際立つ。言葉はないのに、絶望を感じさせる定子の姿。ききょうの心中はいかばかりか。 ききょうは定子を愛してやまないが、自分の気持ちを優先しないのは見習うべきところかもしれない。今回もだが、伊周らの皇子を産めという脅しにもにらみつけるだけで堪えている。自分の身分をわきまえ、定子が責められぬように、ということなのだろうがそれにしたって、だ。
まひろと為時の父娘の関係に涙
一方、まひろのほうにも変化があった。 父・為時(岸谷五朗)が淡路守を命じられたが、その直後に越前守へと国替えになった。越前は宋人が多く集まる場所。漢籍にも秀でている為時には最適な地であった。 なぜそんなにうまく? と首をひねるところだが、実はまひろが父に成り代わって道長に国替えの申し文を送っていたのだ。 そして、この状況に為時もさすがに黙ってはいられなかったのだろう。まひろに真実を訪ねる。従五位下の叙爵も、淡路守の任官も、越前守への国替えもすべて道長の計らい。そしてこれは道長からまひろへの思いとしか考えられない、と。まひろの生き方をとやかく言わないし、ふたりの関係は堅物の自分には計り知れぬもの。そこに踏み込むことはしないが、何も知らずに越前に行くことはできない――。 そんな為時にまひろも応え、道長との関係についてついに打ち明けた。きっと、まひろが道長の妾になっていれば、為時はもっと早くに官職につけていただろう。しかし、時間がかかっても、為時がもっとも力を発揮できるであろう場所にたどり着くことができた。ある意味、まひろの決意が呼び込んだ結果なのかもしれない。 それにしても、毎回、道長にとってまひろの存在の大きさを実感させられる。今回は申し文を見て、為時ではなくまひろのが書いたものだと勘づいた。現代ではあり得ないだろうけれど、平安の世は顔を見るより、字を見るほうが多かったかもしれない。前回も行成の字が人気だ、という話もあった。現代で言うと、SNSの裏アカが文章の癖で分かってしまうようなものだろうか(というと情緒がないが……)。
道長の時代が始まる
伊周の自滅により、道長の力はより強大なものになっていきそうだ。伊周の行いをここぞと利用をし、追い落とす……というイメージだったが、実際に動いていたのは周囲の人間のようにも思う。 真摯に政にも人にも向き合おうとする姿勢はどのように変化していくのか。それとも変化はしないのか。 そろそろまひろと言葉を交わしてほしいが、彼女は越前へと旅立つ。 <文/ふくだりょうこ> 【ふくだりょうこ】 大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーのライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。好きなものはお酒と読書とライブ
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