リスクを低減する行動とは?(後篇)
認知症人口は、2025年には700万人になると言われている(厚労省「認知症高齢者の将来推計について」より、認知症施策 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)。この連載では、認知症を回避するためにできることはあるのか、また、認知症対策として今、どのようなことが行われているのかなどについて、様々な現場に足を運びながら見ていく。なお、筆者の立場は、「離れて住む実家の母の認知症を防ぐこと」。よって、対策を見ていく際には、「どうすれば自分以外の人にその対策を行ってもらうことができるのか」も合わせて考えていきたい。
運動にリスク低減効果あり!
前回から、国立研究開発法人国立長寿医療研究センター・研究所長の櫻井孝先生にお話を伺いながら、「あたまとからだを元気にする MCIハンドブック」(以下、ハンドブック)を見ている。 前回は、「認知症の原因疾患」と「生活習慣病・病気」と認知症の関係を見た。今回は、認知症リスク低減の3本柱とも言える「運動・食事・社会生活」の具体的な内容と、その他の要素を見ていく。 まずは運動から。 ハンドブックによると、「認知症になってしまった方の13%が運動不足に関連するとされており、この運動不足の割合が10%減少すれば全世界で38万人の認知症を予防できる可能性があることが示されている」という。さらに、「認知症ではない方が5年後に認知症になる原因を調査したところ、定期的な運動をしていた方はそうでない方に比べて認知症のリスクが31%低いことが示された」というのだ! 「運動が大事」というのは、誰もが薄々感じている事だろうけれど、こうして数字で表されると本気で取り組まねばと気持ちが引き締まる。 運動によって「神経栄養因子」と呼ばれるたんぱく質が増え、脳の容積も大きくなることがわかっているのだとか。 「加齢により、脳は少しずつ小さくなったり機能が低下したりしますが、運動をすることで、脳の血流量が増加したり神経細胞が増えていきます」(櫻井先生、以下同) こうなると気になるのは、運動の頻度や強度だ。ウォーキングなどの有酸素運動と筋トレなどの無酸素運動を組み合わせるのがベターらしいが、「ハードな運動でなく散歩程度のものでも、週3回以上続けて行えば、運動習慣のない人に比べて約33%が認知症になりにくいことがわかっている」という。 また、運動課題と認知症課題を両方同時に行い、心身の機能向上を目指す「コグニサイズ」という取り組みでは、頭を使いながら運動を行うことで脳萎縮の改善が見られたという報告があるとか。単に運動するだけでも良いが、「数を数えながら」「引き算しながら」「しりとりしながら」行うと、より良いのかもしれない。