トウシンマカオをＶに導いた菅原明良騎手

［ＧⅡセントウルステークス＝２０２４年９月８日（日曜）３歳上、中京競馬場・芝１２００メートル］ 【写真】雄叫び炸裂！トウシンマカオ会心の差し切りＶ 　８日、中京競馬場で行われたサマースプリントシリーズ最終戦・第３８回ＧⅡセントウルＳ（芝１２００メートル）はトウシンマカオ（牡５・高柳瑞）が大外から差し切って優勝した。勝ち時計１分０７秒７（良）。重賞３勝の実力馬の２番人気での勝利は〝順当Ｖ〟にも映るが、内枠有利な前残りの馬場、結果の出ていなかった左回りと、決して有利とは言えない条件をはね返しての価値ある勝利だった。ＧⅠタイトルにグッと近づいた一戦を振り返ろう。 　見た目には芝がはげ、荒れて見えた内側の馬場。しかし、土曜日からの競馬を見ると、内～真ん中を通った馬が上位に来ることがほとんどだった。また、分かりやす過ぎるほどの前残り傾向。速い馬が揃った中での１７番枠というのは、トウシンマカオにとって決していい条件ではなかったはずだ。 「昨日の競馬だけでなく、今日の競馬も前で決まることが多かったので、外枠はキツいな、難しい競馬になるなとは思っていました」。実際にレース後の鞍上・菅原明も、戦前に感じていた素直な感情を吐露した。しかし、無理に内に入れることも、前を追いかけることもしない。外めをノビノビと走らせ、トウシンマカオの最後の脚を確信しているかのようにジッと待ち、直線を向いて少ししてから満を持して追い出したのだ。するとトウシンマカオはしなるムチに呼応するかのように伸びて先行馬を一気にのみ込んだ。 「大きく走らせた方がいいタイプで、どの競馬場でも外枠からでも結果が出ていましたから」とは菅原明。さらに、重賞で結果が出ていなかった左回りでも、「調教では問題なく走ってくれていましたから」と馬を心から信じていた。高松宮記念以降に左回りを走る際は右側にのみ着けていたチークや、馬自身の成長、展開などいろいろとかみ合ってのことではあっただろう。しかし、見守った高柳瑞調教師も「調教を含め、何度も乗ってくれていますから」とキッパリ話したように、馬場傾向やデータに左右されず馬自身の力を信じた鞍上だからこそ導けた勝利だったのではないだろうか。 「一度、僕が病気（急性虫垂炎）で乗り替わりになりましたが、またこうして依頼をしてくださったオーナー、関係者に感謝しています」と謝意を述べた菅原明。「ここは前哨戦でやや仕上がりに余裕もありましたから、本番（スプリンターズＳ）はもっといい状態で行けると思います」とさらなる上積みが見込めるとなれば、これまで４度はね返されてきたＧⅠの壁も乗り越えて大きな恩返しができる可能性は十分あろう。