満開の河津桜 うねる人波 笑顔も“早咲き”
2月28日に満開が告げられた伊豆半島の河津桜(かわづざくら、静岡県河津町)は、この日今シーズン最高の人出となり、春の先駆けをめでる人の波で町内が埋まりました。車の渋滞や満員電車をものともせず花見に駆けつける日本人のフィーバーは外国人を驚かせるといいます。早咲きを楽しむ「花一番」の町の表情を見てみました。 【写真】早咲きの河津桜が満開に ── 静岡県河津町
河津桜まつり実行委員会の事務局を務める町観光協会によると、穏やかな好天となった28日は週末と満開が重なって1週前の21日の土曜日の人出約3万人をさらに上回るにぎわいとなりました。ピンクの花に彩られた町内の河津川沿いには家族連れやカップルが繰り出し、笑顔があふれていました。
実行委員会などは、人口8000人足らずのコンパクトな町内に30か所を超す駐車場を設定し、6系統のシャトルバスを運行するなどフル回転の運営。町内では交通整理の係員が声をからし、人波を縫うように走る車の事故防止に懸命です。事務局は「来町の際はぜひ公共交通機関を使っていただきたい」と話します。
しかし、その公共交通機関の電車も大変な混雑。28日午前10時に東京駅を出発、河津に向かう特急「踊り子107号」に乗ると、10両編成のうち2両ある自由席は電車の座席指定券を取れなかった花見客らで通路もいっぱい。河津に着くまで2時間以上立ち続けることになりました。中高年の客も多く、花を見るためには我慢、の表情も見てとれます。「昔なら電車の通路に新聞紙を敷いて座るところだね」と苦しまぎれの思い出話も出ます。
それでも笑顔で花見に訪れる人々で河津駅は埋まりました。河津駅前から河津川に至る桜並木沿いにはアジやキンメダイの開き、フキノトウ、花ワサビなどを売る出店がにぎわっていました。サンマの押しずしや焼きそばも人気です。桜並木を軽やかに散策した花見客は、帰りの電車を待ってホーム上で再び長い列をつくりました。宮城ナンバーなど県外車も並ぶ駐車場からも帰りの長旅に出る車が走り去りました。その人々には“苦行”はないようです。 (高越良一/ライター)
《メモ》…実行委員会事務局によると、満開になった河津桜は1週間から10日ほど楽しめるという。3月10日までの河津桜まつり期間中、午後6時から桜並木や名木のライトアップも行う。伊豆の踊り子との記念撮影(土日祝日のみ)などのイベントも予定している