スプリンターズステークスで外国馬は買うべきか? 過去に勝利を収めた外国馬の好走パターンから推理
人気薄での逃亡劇で波乱を演出(2010年/ウルトラファンタジー)
その後は少し海外馬の参戦が少なくなっていましたが、2009年にシーニックブラストが久しぶりの参戦(3番人気16着)。その翌年の2010年にはグリーンバーディーとウルトラファンタジーの2頭が参戦しました。 実はこの年、海外馬で人気を集めていたのはグリーンバーディーの方でした。同年にシンガポールのGⅠクリスフライヤー国際スプリントにて当時の短距離最強格だったロケットマンを降して勝利。日本でもセントウルステークスで2着に好走していたこともあり、その勢いに注目が集まっていたのです。 一方のウルトラファンタジーは、G1で2着もありましたが、過去の海外馬などと比較しても実績面で劣っていました。しかし、スプリンターズステークスでは前半3ハロン33.1秒の速めの展開を4コーナー先頭で迎えると、そのまま勢いは衰えずダッシャーゴーゴー(4着降着)をわずかに凌いで押し切りました。なお、1番人気に支持されていたグリーンバーディーは後方から伸びきれず7着に敗れています。 やはりウルトラファンタジーは香港馬らしく筋肉量の非常に豊富な馬体。540kgの巨漢を活かした粘り込みはサイレントウィットネスを彷彿とさせました。逆にグリーンバーディーは488kgと決して大型ではなく、後方から末脚を活かす脚質も合わなかったと見てよさそうです。
共通点は「馬格」と「スピード持続力」
ここまで3頭の勝ち馬を振り返ってきましたが、共通しているのは2点。 1つ目は「馬格」で、スピードを生むのは筋肉。そして筋肉量は馬体重に比例します。実際にスプリンターズステークスにおいて海外馬で馬体重が500kg未満だった馬の成績は(0.0.0.8)と好走例はありません。一方、500kg以上は(3.0.2.17)で単勝回収率は100%超え。特に540kgを超えると(2.0.1.4)で好走率はさらにアップしています。 そしてもう2つ目が「スピード持続力」であり、中山競馬場芝1200mは前半部分が下り坂のため、ペースが速くなりやすい傾向があります。直線は短いので後方一気は決まり辛く、ハイペースを追走して粘り込むという適性が重要になります。こちらも実際にスプリンターズステークスにおいて海外馬で4コーナー3番手内だった馬は(3.0.0.1)。一方、4番手以下になってしまった馬は(0.0.1.24)と苦戦しています。 今年出走するビクターザウィナー、ムゲンの2頭。当日の馬体重は現時点で不明ですが、2頭が参戦した今春のチェアマンズSPというレースでは前者が498kgで後者が502kgとなっています。「馬格」という面ではムゲンに分がありそうです。ただ、そのレースでは前で競馬を進めたビクターザウィナーに対して、ムゲンは後方から。「スピード持続力」という点ではビクターザウィナーが有利でしょう。 つまりどちらも、過去の勝ち馬の好走パターンの片方しか満たしていません。よって、筆者としては馬券的にはあくまで押さえまでと予想しています。2頭の比較では「馬格」の面でわずかに劣っただけのビクターザウィナーの方がよりチャンスはあるかなという見立てです。 文/安井涼太 【安井涼太】 各種メディアで活躍中の競馬予想家。新刊『安井式上がりXハロン攻略法(秀和システム)』が11月15日に発売された。『競走馬の適性を5つに分けて激走を見抜く! 脚質ギアファイブ(ガイドワークス)』『超穴馬の激走を見抜く! 追走力必勝法(秀和システム)』、『安井式ラップキャラ(ベストセラーズ)』など多数の書籍を執筆。
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