【人事ガチャしんどい】前向きに新年度を迎えるには? 愛媛の異動事情も調査 「人手不足の埋め合わせはNG」
4月の人事異動を控え、そわそわと落ち着かない人も少なくないのでは。近年、どの部署に異動するか分からない心境や、配属先の当たり外れをカプセル玩具に例えた「人事ガチャ」「配属ガチャ」という言葉があります。愛媛新聞ONLINEが3月上中旬、人事異動や配属に関する調査を実施したところ、回答者の半数超の約54%が望まない異動を経験していました。 全ての従業員の希望がかなう異動はないと分かっていても、新しい業務や環境に慣れるまでは不安が大きいものです。新年度を前向きに迎えるための心構えや人事異動の在り方について、人材育成や研修を行うキャップ(松山市)社長の森美佐子さんに尋ねました。(原田茜) ◆半数強は望まない異動を経験 「苦手な数字を扱う部署に異動。時間がたってもなかなか慣れず、ストレスだった」(30代女性) 「育休復帰から1年で自宅から遠方の勤務地に異動になった。望まない昇進もして管理職になり、仕事と家事、育児の両立が困難になった」(40代女性) 調査は3月8~15日にインターネットで実施し、県内を中心に男女54人が回答。自身の希望に沿わない経験をした人から、こんな声が寄せられました。 中には「別の部署を経験したことで視野が広がり、元の職場に戻った時にできることが増えた」(40代男性)、「入社2年目に異動。その職種で転職も行い、結果的に良かった」(30代男性)といったポジティブな意見も。異動は精神的負担が大きい一方で、キャリア・スキルアップにもつながることがうかがえました。 ◆「ガチャ」の裏には… キャップでは、新入社員の離職やハラスメントなど各企業が抱える問題に対して、さまざまな研修やコンサルタントを実施しています。 森さんは「人事ガチャ」「配属ガチャ」という言葉が広がる背景について「言葉の裏には、従業員の不安と不満があるのだと思います。日ごろ懸命に仕事に向き合っているからこそ、『何が起こるか分からない』『自分の都合や希望が通らない理不尽さ』に納得できなかったり、耐えられなかったりする人もいるのではないでしょうか」と推測します。 ◆言語化が大切 人事異動では勤務地や仕事内容、人間関係など職場環境が変わることも。自身に異動がなくても、新年度のスタートに漠然とした不安を感じている人が多いかもしれません。前向きに新年度を迎えるために森さんは、心のしなやかさを保つ「心理的柔軟性」が鍵を握ると説明します。 心理的柔軟性とは、困難な状況にあっても大切なことに向けて役立つ行動を取ることを指します。「まずは何が不安なのかや、そう感じる理由など自分の気持ちを掘り下げ、言語化してみましょう」とアドバイスします。 その上で、自分の力で「変えられるもの」と、「変えられないもの」を見極めます。例えば、異動や配属そのものは変えられませんが、新しい環境になじもうと努力したり、今後の目標やキャリアに向けて資格の取得を目指したりすることは自分の意識次第でできることだといいます。 「異動をなかなか受け入れられない場合は、自分に足りないスキルや新しい部署で期待されているところなどを上司に確認してみてもいいかもしれません」。変えられないものはしなやかに受け入れ、変えられるものは自分ができる行動につなげていくのだそうです。 ◆離職のきっかけにも 人事異動は組織の生産性向上や経営の活性化などを目的としていますが、従業員の能力や適性に合わない異動となった場合は離職のきっかけになるケースもあります。 企業に求められる対応として、森さんは▽従業員一人一人のキャリアデザインへの理解や考慮▽配属の透明性向上と丁寧な説明▽人事戦略の策定―を挙げます。 「従業員との面談の機会を月1回設けるなど、日ごろからコミュニケーションを図るべきです。異動や配属は適材適所が原則で人手不足の埋め合わせをするのではなく、従業員を育てていくという観点が必要になります」と力を込めます。
愛媛新聞社