【フェブラリーS回顧】超ハイペースを先行し押し切ったペプチドナイル 昨年末に見せた進化の片りん
母の血が騒いだガイアフォース
レースラップは前後半800m45.6-50.1。東京の直線は各馬にとって極限状態に近かった。インから見せ場を作ったイグナイターはやはり、中央勢と対等に渡り合えるスピードがある。一方、オメガギネスは直線に入って反応できなかった。これまで経験したことがない流れに戸惑ったようだ。8着ウィルソンテソーロ、12着ドゥラエレーデはここ2走、中距離で先行しており、さらに前走は時計を要する大井。今回の流れは勝手が違ったか。快足ドンフランキーを深追いしたのは誤算だった。短距離馬のペースに付き合っては末脚を残せない。中距離で出直しだろう。 2着ガイアフォースは初ダートで気を吐いた。先行勢の後ろで流れに半分付き合ったような競馬だけに価値はある。最後はセキフウ、タガノビューティーとの競り合いを制した。ダートをモロともしない精神力を感じる。 鞍上の長岡禎仁騎手はGⅠ・4度目の挑戦で2度目の2着。フェブラリーSは16番人気で波乱を呼んだ20年ケイティブレイブ以来で、このレースの連対率は100%だ。この日、最終レースも勝っており、もっと経験を積んで栄光をつかんでほしい。 ガイアフォースの母ナターレは南関東で重賞を3つ勝った。その父はクロフネで5歳にして母系の血が騒ぐ。クロフネも芝からダートに矛先を変え、大化けした。賞金水準が高いダート戦線は難しい部分もある。今回はGⅠのため、レーティングで出走枠を確保できただけに、早めに賞金を加算し経験も積みたいところだ。 3着セキフウは武豊騎手のペース判断が好結果を呼び込んだ。展開待ちのタイプで、連続好走が難しい点が馬券を買う上での悩みの種だ。4着タガノビューティーと同じく昨年の武蔵野S出走馬であり、この辺のつながりは来年に向けてヒントになるのではないか。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬中心の文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳