7月2日発表の日銀短観で、注目すべき“でない”ポイントとは?
7月2日は日銀短観(6月調査)が発表されます。ヘッドラインである大企業・製造業の業況判断DIは当社予想が+20、市場予想中央値が+22。3月調査の+24から低下が見込まれており、予想どおりになれば2回調査連続の低下となります。2016年3Qのボトムから17年4Qまで5回調査連続で改善してきた経緯を踏まえれば、さほど悲観する必要はないとはいえ、2回調査連続の低下は景気の方向感が変化したことを人々に意識させ得るため注意が必要です。
ニュースなどでは取り上げられるけれど、大きな意味があるとは思えないこととは?
「先行き」も慎重な見通しが示されそうです。当社予想は+18、市場予想は+20と、双方とも「最近」対比で低下が見込まれています。自動車産業の裾野が広い日本では、貿易戦争の被害が懸念されやすく、こうした警戒感が短観で示される可能性が高いでしょう。日銀短観は非常にメジャーな指標ゆえ、低下そのものが景気のマイナス材料になることから注意が必要です。設備投資意欲を削ぐなど、積極的な企業経営を阻害する可能性が懸念されます。 他方、日銀短観で示される「想定為替レート」と実勢レートの乖離幅縮小が(マスコミ報道で)朗報として受け止められそうです。今回の短観で示される想定為替レートは実勢レートとほぼ同じ110円近傍になるでしょう。4月2日発表の3月調査では、短観発表時の実勢レートが106-107円近傍であったのに対して、想定レートが110円近傍であったことから、想定レート対比での円高のダメージを懸念する報道が多くありました。 また4・5月の決算シーズンでは一部大企業が今期の想定レートを105円としたことで、「企業は円高を予想している」との報道も多くみられました。しかしながら、短観等で示される企業の想定レートに「予想」という含意はなく、それが現実の為替レートと乖離したからといって、企業が想定外の円高に直面しているとは限りません。逆も然り、想定レートと実勢レートの乖離幅が縮小したからといって企業がそれを“良し!予想どおりの為替だ”と自信を深めているとは考えにくいです。 というのも、想定レートと実勢レートの関係をみると、想定レートが実勢レートを単に後追いしていることがわかります。これは調査回答企業が、調査回答日(あるいは直近1カ月の平均値等)の実勢レートをそのまま“想定レート”として機械的に回答している可能性が示唆されます。日銀短観では必ずといって良いほど、想定レートと実勢レートの乖離が話題となりますが、それが大きな意味のあることなのか、筆者は疑問に思います。
(第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一) ※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。