全国の空き家、過去最多を更新し約900万戸に 地方在住者に聞く、増える空き家の現状
■全国で確認された空き家、約900万戸に 筆者の出身地は秋田県羽後町という町だが、秋田県は過疎化と人口減少が全国トップレベルで進んでいるため、とにかく尋常ではないレベルで空き家が多い。実家の周辺にも何軒も空き家があり、廃墟化しているものもある。空き家は草が生い茂り、虫が繁殖していたり、なかには『風の谷のナウシカ』の腐海のように謎の植物が生えている例もある。 【写真】過疎化が進み秋田県羽後町になる町の書店、ミケーネの店内の本棚や地元色の強いラインナップ、書店を経営するためのさまざまな取り組みを見る 空き家対策は地方の大きな問題であり、自治体も様々な対策を講じているというが、はっきり言って効果はなかなか見られない。取材をしてみると民宿を始めたり、カフェに改装するなどの例があるが、どこも似たような活用方法が多い。抜本的な空き家対策は、結局、取り壊すしかないように思う。空き家を放置していては、いいことがまったくないからだ。 朝日新聞など各社が報じているように、総務省が4月30日に公表した「住宅・土地統計調査」(速報値)によると、全国で確認された空き家が約900万戸となり、過去最多を更新したことがわかった。空き家の割合(空き家率)も約13・8%であり、こちらも過去最高を更新したという。いずれも、2023年10月時点でのデータとなっており、さらに戸数が増加していることは確実である。 なお、前回の調査は2018年に行われているが、そのときは約849万戸であり、約51万戸も増加していることになる。その主な原因は高齢化であり、相続もされず、所有権が曖昧になったまま放置されている家も多いことだろう。東京では投機マネーによってマンションの価格が上がり続けているが、地方では家が余っている状況で、まったく資産価値がない“負動産”も増えている。 ■空き家にはさまざまな問題点が生じている 秋田在住の筆者の友人は、目の前の家が数年前から空き家になり、困り果てている。地方に住むことは今後リスクになるのではないかと考え、このように語っている。 「空き家に野良猫が住みつき、その敷地内にある池にはボウフラがわいて蚊が大量発生するんです。蚊が我が家にやってくるし、たまにその家の窓を見るとカメムシがたくさんいて、とにかく一刻も早く撤去して欲しい。地方はどんどん人が減っていくし、公共交通や医療などのインフラの維持もまともにできなくなるのではないでしょうか。よほど社会システムが変わらない限り、地方にこれから住むのはリスクでしかないと感じます」 書店が次々に地方から消滅しているように、飲食店や小売店も続々姿を消している。コロナ騒動後、その傾向が顕著になった。以前、ある議員が空き家を漫画の原画の収蔵庫として活用できないかという意見を述べていたが、人口が減り続けている地方でそれが可能なのか、疑問である。地方創生が叫ばれて久しいが、地方を取り巻く問題はますます悪化しているように感じられるのは、筆者だけであろうか。
山内貴範