福士蒼汰、ゆとり世代ヒットマン挑戦 ブルース・リー格闘技を学ぶ理由
あこがれの岡田准一と同じ格闘技を学んで
迫力とスピード感あふれる対決シーンは同作の見どころの一つだが、岡田は福士にとってあこがれの俳優であり、同じ格闘技の愛好家でもある。 「銃撃戦で、距離がある中でお互い弾丸をよけながら戦う芝居ですから、息を合わせることが難しかったです。岡田さんは動きのスピードもずば抜けて速く、とにかく食らいついていこうと必死でした。あの速さ、正確さ、どうやったらあの境地に至れるのかと、とても不思議ですし凄いなと思います」 いくつかの格闘技を習得している岡田だが、インストラクターの資格を持つジークンドーは、福士も学んでいる。ブルース・リーが創始者で、「実戦は6秒以内に終わらせる」という当初の思想はそのまま「ザ・ファブル」の“6秒以内に相手を仕留める”アキラのスキルとも被る。 「2時間稽古をすると、そのあと30分以上は動けなくなってしまうほどハードで。なのに岡田さんはそんな激しい稽古をもう何年もやられていて、インストラクターの免許も持ってらっしゃって、これはもう尋常じゃないなと感じています。やっぱり岡田さんの演技を拝見していても、そうした経験があるからこその説得力を感じているので、敬服しています」 「ザ・ファブル」は他にも柳楽優弥、向井理、木村了、安田顕、佐藤浩市らオールスターと言っていい男優陣がそろう。その中で木村文乃、山本美月の美しさが引き立つ。絶妙のバランスだ。 「ただ、現場は暑苦しかったです」と笑って振り返る。「出演者のみなさんが濃いキャラクターを演じられていらっしゃいますし、撮影時期も夏だったので、本当、すごく暑かったです」
“揺らぎのある俳優”目指す
目指す俳優像は、“揺らぎのある俳優”だという。 「エディ・レッドメインさんが好きで、映画『リリーのすべて』のような、人の心を揺さぶる演技をするかと思えば、彼自身もある種の揺らぎを持っているようなイメージなんです。でも彼は、『ファンタスティック・ビースト』などではアクションだったりファンタジー要素がある大作の主演を成し遂げている。その幅も好きです」 振り幅の広さは、そういった志向からきているのかもしれない。猫と旅する心優しき青年を演じた「旅猫リポート」のような作品と、「ザ・ファブル」のような作品とでは、臨み方はどう違うのだろうか。 「集中する脳の場所が違うというか。キレが大切なアクションの場合は、状況を把握することに集中していることが多いです。人間描写が大事な作品の場合は、状況より、主観に重点を置いています。役を通しての考え方が前面に出て、物事に対しての想いや見方が、頭から心に落ちてくるという感覚なのかもしれません」 福士演じるクールな殺し屋で、ヒヤッとしてみるのも一興だ。 (取材・文・撮影:志和浩司)