Khaki主催ツーマンライブ『後期定例』 観客全体を圧倒させた、崎山蒼志との濃厚な一夜
中塩のボーカルによる耽美的な「子宮」から、平川がフォーキーで軽やかなギターを奏でて歌う「Kajiura」へと続き、ゆったりとした鍵盤の音色でスタートしたのは「星の口紅」。ボーカルをとるのは黒羽だ。ふたりとはまた違うエモーショナルな歌声が変化球となり、また一瞬、誰の歌声?という感じで観客がメンバーそれぞれに視線を走らせるような仕掛けもある。全体を通して暗めの照明が基調なことも相まって、ワクワク感が増す。そして不穏なベースから新曲「君のせい」へと続く。 即興性にも満ちたジャジーでスリリングなアンサンブルに、“君のせい”という(時に怨念的な)リフレインと中塩のトランペットがアクセントとなった曲は、実験的だ。それでいて前衛に走りすぎないポップさや歌心がある。すでにライブを通じて育っている曲だと思うが、まだまだ更なる可能性や観客とのケミストリーを秘めた曲だと思うので、楽しみでもある。 エキゾチックなフレーズとサイケデリックなメロディが絡む幻影的な「車輪」、タイトなビートにエフェクティブで変態的なベースが絡む「萌芽」でスタートした終盤は、はっぴいえんど的な風が吹く「Thirteen」でフロアを柔らかに包み、「軽民物語」で再び黒羽が歌声を響かせた。 ここまでMCらしいMCを挟むことなく進んできたが、最後の最後に中塩が「どうもKhakiです。『後期定例』にお越しいただきありがとうございました。崎山くん、かっこよかったですね」と観客に語りかけて、ライブは早くも終わりへと向かう。ラストに据えた曲は「文明児」。曲が進むごとにボルテージが上がり、後半ではどんどんアンサンブルのスピードが上がって激しさを増していくと、自然とフロアからは歓声が上がり、観客もまた感情をバーストさせ熱狂が会場を包んでいった。 アンコールでは12月1日(日)に都内でイベントを行うことを発表。また、新曲や昨年リリースした2ndシングル「Undercurrent」が演奏された。「Undercurrent #1」「Undercurrent #2」「Undercurrent #3」という3つのトラックが収録されたこのシングルは、シャッフル再生機能を使うことで6通りの曲を楽しめるというもの。ライブではこの3トラックを自由に組み合わせ、またアレンジも施し無限の広がりをもって表現される。 凝り性でひねくれたKhakiの遊び心と、実験精神に溢れコアな音楽ファンを楽しませつつ、キャッチーさは忘れない、そんな5人の真骨頂と言える曲。その時々によって、また新たな組み合わせでバンドの今を伝えるものであるし、今回はゲストの崎山蒼志がサプライズ的に登場しトリプルギターで魅せるこの日ならではの形となった。新曲も増えたライブとなったが、それがこの先どういう形でリリースとなるのか、まとまった作品になっていくのかも楽しみにしたい。 <公演情報> 『後期定例』 2024年7月29日 東京・渋谷WWW X 出演:Khaki/崎山蒼志 【セットリスト】 崎山蒼志 01.Samidare 02.通り雨、うつつのナラカ 03.覚えていたのに 04.燈 05.幽けき 06.Pale Pink-Extended ver- 07.ビジョン 08.I Don’t Wanna Dance In This Squall 09.プレデター 10.水栓 Khaki 01.違う月を見ていた 02.未発表曲 03.Hazuki 04.子宮 05.Kajiura 06.未発表曲 07.未発表曲 08.車輪 09.萌芽 10.Thirteen(旧) 11.未発表曲 12.未発表曲 Encore 13.未発表曲 14.Undercurrent #3 15.Undercurrent #2 16.Undercurrent #1 17.Undercurrent #2 18.Undercurrent #3
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