父親から「結婚しろ」「孫の顔が見たい」の声。恋愛も行為もなし。それ以外は、子を持つ普通の夫婦に
行為も恋愛感情もナシ。「友情結婚」をしたカップル
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧ ーDATAー 三井ケイトさん(仮名)・メイさん(仮名) ともに 年齢:30代 職業:会社員 ୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧ 三井ケイトさんとメイさん(ともに仮名・30代)は掲示板を通じて出会い、恋愛感情や性行為をともなわない通称「友情結婚」をした。ふたりの出会いから友情結婚にいたるまでを取材した。
父親から「結婚しろ」「孫の顔が見たい」の声
――おふたりは友情結婚をしたのですか? 三井ケイトさん:2021年に「友情結婚」というかたちで籍を入れました。現在は1歳の子どもを育てています。(以下、ケイトに省略) ――友情結婚とはどのような結婚のかたちを指すのでしょうか? ケイト:人によってさまざまな考え方があるようですが、僕たちは「お互いに恋愛感情や性的欲求を持たない結婚」という共通認識を持っています。 三井メイさん:私たちの関係性に恋愛感情とセックスがない以外は、普通の夫婦生活を送っていますね。(以下、メイに省略) ――おふたりはなぜ友情結婚しようと思ったのですか? ケイト:僕は、女性に恋愛感情を抱くけれど、女性と性行為をしたいと思わないセクシュアリティです。これまで性的指向を秘密にして女性とおつきあいしてきましたが、セックスができず、修羅場の末に何度も別れを経験しました。 過去の経験から結婚せずに生きていこうと思っていたのですが、30歳になった頃に父親から「そろそろ孫の顔が見たい」と言われたんです。 ――父親から結婚に対するプレッシャーがあったのですね。 ケイト:はい。父親は「男は結婚して一人前」という価値観を持っていました。父親だけでなく、僕が勤めている会社にもその風潮があります。世間体もあるし、しぶしぶ結婚を考え始めたものの、子どもをつくるための性行為はできないし……と、悶々としながらネットを見ていた時、「友情結婚」という言葉を知ったんです。
ドラマで知った恋愛感情・セックスなしの結婚の形
――ケイトさんは父親の結婚への圧がきっかけで友情結婚にたどり着いたのですね。メイさんはどうですか? メイ:私もケイトと同じで、親が結婚しろとうるさかったのが一番大きな理由ですね。私は20歳の頃から母に結婚しろと言われてきました。 ――20歳! そんなに早くからですか? メイ:はい。私の母はいわゆる“毒親”というやつです。母は「結婚して子どもを持つのが、女の幸せ」という価値観を持っていました。私がひとりっ子だったこともあり、母親は私の結婚と出産に大きな期待を持っていたようです。現在は地元を離れているのですが、帰省するたびに「結婚はまだ?」としつこく聞かれました。 ――ケイトさん同様に、メイさんも親からの期待があったのですね。 メイ:そうですね。私もケイトも親が田舎に住んでいるので、なおさらその傾向は強いような気がします。私はよっぽど信頼をおいている相手でないと恋愛感情も性的欲求も抱かないセクシュアリティを自認しています。 男性に対しての嫌悪感はありませんでしたが、セックスには嫌悪感がありました。妊娠やそのほかのリスクをおかしてまでセックスをしたいとは思えないんです。 ――結婚以前に、男性に対して恋愛感情や性的欲求を抱くことがなかったのですね。 メイ:そうですね。だけど母親からの結婚へのプレッシャーは増すばかりでした。 ――親に自身のセクシャリティについて話すことはしませんでしたか? メイ:話すことにより、もっと面倒になると思ったのでしていません。どうにかして恋愛や性行為をせずに結婚する方法を考えました。そのとき、テレビドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』を知ったんです。 ――『逃げるは恥だが役に立つ』は、“契約結婚”がテーマでしたね。 メイ:「恋愛ナシ、セックスナシの結婚、いいじゃん!」と共感しました。ドラマでは最終的に夫婦間に恋愛感情が芽生えますが、私は異性に対して恋愛感情や性的欲求が芽生えることはありません。さらに調べていたところ、友情結婚というワードにたどりつきました。