松岡充「ボロボロで『自分には何もない』時も、生きたいと思った」 原点はヒリヒリした必死さ
■ヒリヒリした必死さが突き動かす 僕自身、精神的に病んだ時期は実はありましたし、「生きていてもしょうがない」と思ったこともありました。でも、心身ともにボロボロになって「自分には何もない」と思った時も、それでも「生きたい」と思う自分がいた。いつも僕を突き動かすのは、ヒリヒリした必死さなんです。怖さは感じますが、燃えているのを感じる瞬間でもある。 昨日、稽古後にたまたま盟友の「劇団鹿殺し」の丸尾丸一郎と食事をしたんです。彼は、「自分の中でヒリヒリする感覚がなくなってきたので、松岡さんに会わなきゃと思った」と言ってくれました。 ■作品が大切なものを指し示す ──自身のそうした感覚が薄れた場合は、どうするのだろうか。 松岡 昔は、知らないところに旅に出るという無茶なことをしていましたが、今はやりたいと思っていたことを思い出します。当時やりたかった理由がはっきりとわからなくても1回そこに行ってみる。SOPHIAは7月から29年前のデビュー直後に行ったツアーと同等のキャパでのライブハウスツアーを行いますが、それもそういう意図です。 やりたかったことをやれば、思い出せるものがあるんじゃないか。両手がいっぱいになって、持てなくなって置いていったものがあったとしたら、その時なにを思ってそれを置いたのか。 経験を重ね、人間として、表現者として、昔と比べてもし懐が深くなっているのだとしたら、その時置いてきたものを取りに行くことができるし、それによって大切なものを確認できると思っています。僕はその置いてきたものをずっと歌にしているから、当時の自分の作品が大切なものを指し示してくれ、時に過去の作品が導いてもくれるんです。 まつおか・みつる/1971年生まれ、ミュージシャン・俳優。主演舞台「Change the World」は6月8日~16日、東京・サンシャイン劇場で上演。今年結成30周年を迎えるSOPHIAは、7月からライブハウスツアー「SOPHIA TOUR 2024 "Dear Boys and Girls and"」を行う (構成 ライター 小松香里)
小松香里