「陰謀論」はなぜ蔓延るのか? 「スピリチュアル」 と混じり合うことで生まれるとてつもなくマズい現象とは
仲間たちとともに過ごす充実した日々
そんなスピリチュアルと混ざりやすい「陰謀論」の界隈では、規範だけでなく壮大な物語も得られます。 ここで記す物語とは、人間が目的に向かって歩む日々のことを指します。それもただの目的ではなくて、確たる価値基準により生じた目的です。 この目的が社会全体で共有されたとき、それは大きな物語となります。一刻も早く近代化を目指すべきだ、一致団結して戦争に勝利しよう、成長を続ける日本とともに豊かな生活を実現しよう、といったものです。 が、現代社会ではそのような皆が共有する壮大な物語が消滅してしまったのは周知のとおりです。 ところが、「陰謀論」界隈の住人になれば、そんな物語が簡単に手に入ります。たとえば、芸能界の裏側には闇の組織が存在していて、彼らの悪事を暴こうとした芸能人たちは殺されてしまったとするものです。 彼らは闇の組織と戦うという使命感を胸に、今日もネット上で活動を続けています。正義感を胸に宿し、仲間たちとともに過ごす日々は充実しているに違いありません。 しかし、だからこそ彼らは自分の「真実」を社会や他者に強要してしまうという、反社会的な活動に及びがちです。 規範・使命感・物語・仲間・選民意識といったものが軒並み手に入る魅力的な共同体ですが、その副作用もまた甚大なのです。 写真/shutterstock
---------- 物江潤(ものえ じゅん) 1985(昭和60)年、福島県生まれ。早稲田大学理工学部社会環境工学科卒。東北電力、松下政経塾を経て、2024年10月現在は福島市で塾を経営する傍ら社会批評を中心に執筆活動に取り組む。著書に『空気が支配する国』『デマ・陰謀論・カルト』など。 ----------
物江潤