<ネット選挙>意外にお金がかかる? ネットを使った選挙運動
インターネットを利用した選挙運動の解禁で、SNSや動画配信サイトなどを利用すれば、資金力のない候補者でも有権者に政策を訴えることができるようになりました。一般的に情報を伝えるための費用が下がるとされるネットで、はたして「お金のかからない選挙」は実現するのでしょうか? これまで選挙運動といえば、街頭演説や選挙カー、ビラ配り、ポスター掲示などで候補者の顔と名前を売り込むスタイルがおなじみでした。こうした選挙運動には多額の資金と組織力が必要になるため、「地盤(後援会)、看板(知名度)、かばん(資金)」のいわゆる「三バン」を持たない候補者は不利だといわれてきたのです。 今回の公職選挙法改正を受け、IT関連企業の動きが活発になっています。コミュニティとゲームSNSの「Ameba」を運営するサイバーエージェントは、政治家ブログ開設支援や、ライブ動画配信サービスでの番組配信などを通して、ネットユーザーの政治参加をサポートしていくとしています。無料通話・メールアプリのLINEは、全政党にLINE公式アカウントを無償提供することを表明。電子認証サービスのGMOグローバルサインは、候補者、国会議員、政党向けに「なりすまし」を防止する認証サービスを提供すると発表しました。ネットで選挙運動を行うためのインフラは、着々と整備されつつあります。 新たな広告市場が生まれる兆しも見えます。今回の法改正では、候補者がネットに有料バナー広告を掲載することは認められませんでした。しかし、政党やその支部であれば、直接的な投票呼びかけはできなくとも、政治活動の一環として有料バナー広告を掲載でき、そこに公認候補者の顔写真や名前を載せることも可能です。こうした規定については、無所属の候補者に不利になるため、公平性に欠けると指摘する声も上がっています。 選挙運動の費用は、公職選挙法で上限が定められています。有権者数によって費用は変わってくるのですが、たとえば前回2010年の参院選の場合、比例代表は5200万円、選挙区はおよそ3014万6600円~7250万円でした。しかし、政党の政治活動としての費用に規制はありません。資金力のある政党は、有料バナー広告を大量に出稿して候補者の「顔を売る」こともできます。 これまでと同じ選挙運動の費用に加え、政党を通じたネットでの広告費もかさみ、逆にこれまでよりお金のかかる選挙戦になってしまう。そんな可能性もありそうです。