新国立劇場『白衛軍』開幕 初日前日フォトコール&囲み取材で村井良大、前田亜希らがコメント
ブルガーコフが未来に託していた願い、祈りを、丁寧に届けていきたい
俳優陣も、自身の見せ場をはじめ作品の見どころについて、それぞれにアピール。 村井は、「今回、初めて舞台上でギターを演奏したり歌ったりします! 今年の9月下旬ぐらいから練習をしてきました。人前でギターを弾くのは初めて。ちょっと緊張しているけれど、楽しい時間、音楽が、いかに人々の心を救ってくれるか、皆さまと共有できたら」。 前田は作者のブルガーコフに思いを馳せ、「彼が未来に託していた願い、祈りを、観てくださる方々に丁寧に届けていきたいなと思っています」。 大場は「困難な時代に生きている人々の生きる様を生き生きと演じたい」。 池岡は「舞台美術がすごいんです!」と前のめりだが、周りからけしかけられて一言、「詩を朗読します」と照れ笑い。 上山は、「すごく緩急がある。コミカルなシーンも、歌うシーンもありますし、何しろ、新国立劇場のこの機構をフルに使った演出がすごい! セットがグワーっと出てきたり上がったり下がったり回ったりするんです!! 見たことのない舞台です」と目を輝かせた。上山はさらに、「芸術とか歌が寄り添いながら、物語が紡がれてゆく。歌の威力ってすごいなと思いました」とも。これを受けて大場は、「少し真面目な話になるけれど──」と断りつつ、「帝政ロシアは、バレエ、文学といった“文化”が生み出された時代。家庭にもそうした文化がこのようにあふれている。けれど、実はそうではない階級の上に、その繁栄がある。私たちはこの生活を守りたいと思っているわけですが、そうではない動きとして、民衆が動き出したとき──私は彼らを“敵”と言う。そういう台詞があるのですが、本当は皆を巻き込んでいい国を作りたかったのに、彼らを支配し、その上に文化が成り立っている。アレクセイという役はそういうことを自覚している人間。帝政側の人間でも、思いは同じだった。そう思いながら取り組んでいます」。
面白い台詞が詰まった作品に。クリスマスにちなんだシーンも
上村は、2009年から1年間の英国留学時にこの作品に出会い、いつか取り組みたいと考えていたと聞く。並々ならぬ思いでクリエーションにのぞんだに違いないが、俳優たちと実際に稽古を重ねることで新たに気づいたこの作品の一面、魅力について尋ねた。 「自分でも意外だったのは、すごくいい台詞がいっぱいある作品だなと気づいたこと。胸に迫る台詞もあれば、楽しくて笑える台詞、そしていまのこの時代に想像が及ぶ台詞、100年前のこの時代に真摯に生きた人たちの思いが伝わる台詞がたくさんあって、久しぶりに台詞で楽しめる芝居に、というのは大袈裟かもしれませんが、総勢19人の俳優が紡ぐその台詞の質感が──恐れずに言うなら、すごく、エンターテインメントになっている。台詞の聞き心地というか、面白い台詞がたくさん詰まった作品になりました」。また、劇場の機構を最大限に活かした舞台、装置へのこだわりについては、「冒頭の、何もない暗闇からある劇世界が現れて──という場面には、過去が現れて、それがいまにも繋がっているんだという思いをこめた。いま起きていることと100年前を短絡的に結び付けていいものではないということは重々わかってはいるのですが、先人たちが生きて培ってきたものがいまにも繋がっているということを、今回のコンセプトとして一番に置きました」と明かした。 最後に「舞台装置を含め、ここまで立体感のある舞台は初めてです!」と断言したのは村井。「それがS席8,800円で観ることができる。正直お得過ぎる(笑)、と感じております。観て後悔しない、心に残る作品。クリスマスにちなんだシーンもあります。皆の生きる姿、懸命に戦う姿を見ていただければ幸いです」と、締めくくった。 取材・文:加藤智子 <公演情報> 『白衛軍 The White Guard』 作:ミハイル・ブルガーコフ 英語台本:アンドリュー・アプトン 翻訳:小田島創志 演出:上村聡史 出演:村井良大、前田亜季、上山竜治、大場泰正、大鷹明良/池岡亮介、石橋徹郎、内田健介、前田一世、小林大介/今國雅彦、山森大輔、西原やすあき、釆澤靖起、駒井健介/武田知久、草彅智文、笹原翔太、松尾諒 日程:2024年12月3日(火)~12月22日(日) 会場:東京・新国立劇場 中劇場