日本の温泉旅館事業にハイアット進出、独自の高級ブランド打ち出す
「宿泊客が快適に過ごせるよう、うまく取捨選択して取り入れたい」とサンドバーグ氏は話している。
アジアに特化した旅行会社リモート・ランズのキャサリン・ヒールド共同創業者兼最高経営責任者(CEO)は、欧米人客向けのアメニティーを用意することは他の旅館経営者にも有効な戦略だと指摘。「日本人以外の高級志向の旅行者の多くはおいしい懐石料理が大好きだが、3、4日に一度がせいぜいで、毎晩は望まないのは確かだ」と付け加えた。
しかし、ATONAでは多くの面で伝統が守られている。コンシェルジュの代わりに、宿泊客のあらゆるニーズに対応する伝統的な旅館の「おかみさん」に類似した責任者を配置する。それぞれの客室にはプライベートな温泉が完備されているが、本格的な温泉を楽しみたいゲストのために、各施設に大きめの共同浴場を用意する計画もある。
計画の当初の詳細からは、ウェルビーイングと結びついた体験を求める好奇心旺盛でエネルギッシュな旅行者が対象だということが読み取れる(例えば、屋久島の施設は世界最古の杉の木が生い茂る国立公園に程近く、ハイキングもできる)。 それでもハイアットとKirakuは、海外からの旅行者や日本人を含む幅広い層をターゲットにしている。
京都や大阪、東京といった都市を既に訪れたことのある旅行者が増えているが、とりわけそうした日本旅行のリピーターにぴったりだ。このような旅慣れた人々は、地方に足を伸ばす可能性がより高く、ATONAはラグジュアリーの信頼できる基準を提供できるだろう。
ただ、ATONAのユニークなコンセプトにはリスクも伴う。人里離れた場所にあり、小規模な施設で、労働集約的なモデルだという点を踏まえれば、旅館が厳しいビジネスだということは明白だ。日本は今、円安によるお得感から観光ブームに沸いているが、それが最初の施設がオープンする26年まで続く保証はない。
ハイアットとKirakuはATONAの施設に投資するためのファンドを設立し、200億円の資金調達を目指している。ウデル氏は「数は限られているが、本当に特別な体験ができるホテルだ」と述べた。