古今東西 かしゆか商店【加賀水引の祝儀袋】
日常を少し贅沢にするもの。日本の風土が感じられるもの。そんな手仕事を探して全国を巡り続ける、店主・かしゆか。今回訪ねたのは石川県金沢市。約百年前にこの町で始まり全国に広がった華やかな細工「加賀水引」と出会いました。 【フォトギャラリーを見る】 日本独特のラッピングだなあ、と以前から気になっていたのが、ご祝儀袋などに使われる「水引」です。 「水引とは、和紙をこより状にして水糊を引いたもの。起源は諸説ありますが、その一つが、7世紀の遣隋使が持ち帰った献上品です。当時の日本人はこれらに結ばれていた紅白の麻紐を見て、航路を守る魔除けや両国の縁結び、未開封の証だと考えた。この出来事はやがて、大切なものを贈る時の振る舞いである “水引折型” に発展します。折型とは和紙で包むこと。包み、水引で結び、表に気持ちを書くという所作が定着しました」
そう教えてくださったのは〈津田水引折型〉の5代目、津田六佑さん。金沢市内の工房兼店舗には、華やかな飾りを施したご祝儀袋が並んでいます。桜や蝶や手毬などのカラフルなものに加え、鶴や松の飾りは3Dのよう! この細工は「加賀水引」と呼ばれる金沢の伝統工芸。〈津田水引折型〉初代の津田左右吉さんが大正4年(1915)頃に発案したものです。 「贈る気持ちがより豊かに伝わるよう、和紙をふっくら折ったり雅やかな細工で飾ったりして、水引折型を芸術の域に高めたんです」
そんな水引細工の結び方の基本は、8の字を2つ重ねたような「あわじ結び」です。ものすごく複雑な細工も、実はあわじ結びの組み合わせや応用で作られていることが多いのだとか。まずは長さ3尺(1m弱)の水引を数本手に取り、シュルシュルッと曲げて通してギュッと結ぶ。よく見ると、細かく丸みをつけたり複雑にくぐらせたりしながらも、端の部分は「まっすぐ」を保つよう手を動かしていることに気づきます。
「水引は一度クセがつくと元には戻りません。つまりヨレがない水引こそが、“結んだ後は誰も手をつけていません” という証です」