【解説】「フェイクニュース対策」の実態を探る――ファクトチェックには“弱点”も…気をつけておきたいこととは
日テレNEWS
「フェイクニュース」に注目が集まる中、さまざまな機関が積極的にファクトチェックや、検閲などを通じて「フェイクニュース対策」に取り組むようになった。一方で、このフェイクニュース対策の活動には、不透明な側面や課題が多い。(国際部 内山瑞貴)
例えば、フェイスブックを運営するアメリカのIT大手「メタ」は2022年3月、ウクライナのゼレンスキー大統領の偽動画を見つけ、削除した。 ロシアのSNSに投稿されていたのは、ゼレンスキー大統領がカメラに向かって話す動画。しかしよく見ると、大統領の頭部の色が不自然に見える。メタによると、この偽動画は「ディープフェイク」というAI技術を使って作られたものだということだ。 アメリカメディアによると、ゼレンスキー大統領の偽動画はユーチューブでも見つかり、削除された。 このように、さまざまな機関が積極的にフェイクニュース対策に取り組むようになったが、この「対策」自体もまだ十分ではない。問題をたくさん抱えているという実態を探っていく。
■問題(1) ファクトチェックをめぐる問題
まず1つ目は、ファクトチェックをめぐる問題だ。アメリカを拠点とするファクトチェックのサイト「PoliteFact」は、政治に関連する主張や声明を「真実」「半分真実」「誤り」などと評価し、なぜそのような判断になったのか、そのプロセスや情報源を記載する活動を行っている。 ただ、このようなファクトチェック活動の大きな問題の1つに、「検証の対象国に偏りがある」という面がある。例えば、カナダのあるシンクタンクが2022年まで行ったファクトチェックを見ると、「3分の2」はロシアが対象となっている。
一方で、ファクトチェックの対象となりにくい国もある。 アメリカ政府は2022年3月、「ロシアが化学兵器を使用する準備をしている可能性が高い」と発表した。しかしこの発表については、3週間以上経って、アメリカメディアが「ロシアに対する『情報戦』の一環であり、証拠がなかったことを当局者が認めた」と報道するまで、この情報を検証するファクトチェックは出てこなかったのだ。メディア研究者らは、西側諸国のファクトチェックの対象が敵対国に偏っていることに懸念を示し、自国の情報も同じ基準で厳密に検証すべきだと主張している。