《連載:悲劇のあと 茨城・特殊清掃の現場》(下) ごみ屋敷
■多頭飼育で汚物散乱 働き盛りの依頼者も 特殊清掃をメインとするスイーパーズは、技術を生かしてペット屋敷やごみ屋敷の依頼も請け負う。ある女性スタッフ(43)は、多頭飼育崩壊の「猫屋敷」から保護した猫を飼っている。死骸が残る現場の清掃にも立ち会い、「かわいそうで胸が痛くなる」と振り返る。 ▽ペット不可 茨城県央地域から依頼があったケースは、高齢女性が住むペット飼育不可の県営住宅で、すみ着いた猫によって汚れや悪臭が発生していた。住人は管理会社から、強制退去か猫の飼育をやめ清掃・消臭するかの二択を迫られていた。 住人の説明では、野良猫を餌付けするうち、次第に数が増えた。猫は割れたガラスの隙間から室内外を行き来し、室内にふん尿が散乱。押し入れの衣類は破かれ、日用品や家具も汚されていた。 清掃前にまず猫を捕獲した。清掃作業は2日間にわたり、初日は汚物の撤去、排泄物の清掃に取りかかり、部屋全体にこびり付いた汚れを除去した。2日目は床やふすまを消毒したほか、柱やドア枠は塗料でコーティングした。 現場では猫9匹を保護し、うち2匹はスタッフが迎え入れた。残り7匹は愛護団体に協力してもらい、猫カフェなどで人に慣れさせた後、里親探しをする。 同社担当者は「(ペットを飼うに当たり)最後まで責任を持つことを自覚したうえで迎えてほしい」としている。 ▽気付いたら 家中にごみがあふれる「ごみ屋敷」の清掃は、働き盛りの世代の依頼者も多く、さまざまな職業の人たちから頼まれる。マンションの場合、ドアを閉め切れば悪臭が漏れない。窓のカーテンを閉め切った場合、周囲には気付かれにくいという。 県央地域で介護職に就く20代女性は、母親の訪問によって自宅のごみ屋敷化が発覚した。仕事が忙しく不規則で、ごみ出しの時間に間に合わず「気付いたらごみがたまってしまった」。ごみだらけのトイレは5年間使わず、近くのコンビニなどで済ませていたという。ごみを撤去した後の床を見ると、湿り気などのためにふやけ、穴が開いていた。大家の要望により、リフォームと消臭作業を行った。 環境省の調査によると、2018年度に茨城県内で認知したごみ屋敷は57件で、5年後の22年度までに改善したのは約2割にとどまった。総務省は今年8月の調査報告書で、ごみ屋敷に直接対応する法律や国の制度がなく内容は多様だとし、「解消には居住者の理解、堆積物の撤去費用の確保などが必要となり決定的な対応策はない」と指摘。一方で、市区町村が可能な限り多くの解消手段を持つことが重要としている。 ▽業者選びは 一方、業界内には課題もある。同社の小山奈津美代表によると、新型コロナウイルスの感染拡大後、県内外で消毒業者への参入が増加。コロナ禍後に特殊清掃を請け負うようになった事業者もある中で、「清掃の知識や技術がなく詐欺に近い業者が増えている」。 業者の見極め方について小山代表は「作業内容の質問をすれば、ある程度は選別ができる」と指摘。完全消臭は住宅の構造を理解していないとできず、内装解体や改修工事も必要となる。工程を説明できない場合は、注意が必要だという。
茨城新聞社