<高校野球>甲子園経験監督がジンバブエ野球代表を指揮 東京五輪出場めざす
春夏2回の甲子園出場経験がある現役の高校野球監督が、アフリカ・ジンバブエの野球代表監督に就任した。おかやま山陽(岡山県浅口市)の堤尚彦監督(47)。青年海外協力隊員としてジンバブエで野球を教えた縁で、白羽の矢が立った。異例の二足のわらじで、2020年東京五輪の出場を目指す。 【写真特集】キャプテントークで意見を述べる各校の主将たち 兵庫県出身。小学校から野球を始め、名門・東北福祉大に進んだが、選手としては芽が出なかった。卒業後の進路に悩んでいた頃、ジンバブエで野球を教える青年海外協力隊員をテレビで知った。番組で隊員が話した「自分の後、教える日本人がいなくなる」との言葉に突き動かされ、自らも応募。1995年、野球普及のためジンバブエに渡った。 かつて英国の植民地で、サッカーやクリケットが盛んだが、野球はほとんど知られていない。「学校に飛び込みで入り、『野球を教えたいので体育の時間がほしい』と直談判した」と振り返る。日本から送ってもらったバットやボールを手に各地を回り、2000人以上に野球を教えた。 2年の任期を終えて帰国。会社員をしながら、「野球の裾野を広げたい」と東南アジアの選手らに野球を教える活動も続けた。06年、おかやま山陽の野球部監督に就任。17年夏に同校を初の甲子園出場に導き、翌18年春にも出場した。 代表監督への就任は15年、来日したジンバブエの野球協会会長から直接打診された。日本高校野球連盟から正式な承認も得て、昨年12月には選手選考や合宿のため約20年ぶりにジンバブエの地を踏んだ。再会した元教え子から涙ながらに握手を求められ、「今の自分があるのはジンバブエでの2年間のおかげ」との思いを強くした。 今月6日、ジンバブエ代表の投手3人が来日。おかやま山陽のグラウンドで部員と一緒に練習し、けん制球の投げ方など基本プレーを堤監督から英語で教わっている。コーレン・ピカ投手(19)は「ジンバブエにはマウンドがなく、日本のグラウンドにはまだ慣れない。堤監督はたくさんのことを知っていて、尊敬している」と話す。 4月下旬には五輪アフリカ予選があり、開催地の南アフリカに乗り込む。高校の県大会と時期が重なり、部員の指揮はコーチ陣に任せる予定だ。五輪出場枠はアフリカと欧州で一つ。予選の同じ組には大リーガーを多数輩出する強豪・南アフリカがいるが、「諦めずにやっていれば道は開ける。挑戦する姿を部員たちにも見てほしい」と目を輝かせる。【戸田紗友莉】