【大学野球】早大戦連投で一皮むけた慶大・渡辺和大 “財産”を手に誓うさらなるレベルアップ
真っすぐの質を高めて
【11月10日】東京六大学リーグ戦第9週 慶大2-1早大(慶大2勝) 慶大・渡辺和大(2年・高松商高)は前日に127球で1失点完投勝利(9対1)を挙げた。早大1回戦で先勝。防御率1.19でトップに立った。疲労は当然ある。だが、早大2回戦も三塁ブルペンでスタンバイした。なぜか。 慶大・堀井哲也監督は試合前に「連勝することが大事。早稲田と明治の優勝決定戦に持っていく。(早稲田が勝てば)優勝が決まるという状況下、お互いプレッシャーの中で、今日の試合がものすごく大事です」と意気込んだ。慶大はすでに5位が決定していたが、早大から勝ち点を挙げるのが使命。負ければ、早大の春秋連覇が決まる。慶大にとって早大戦での連勝が、存在価値を示す場であった。 「リードした終盤に、出番があると言われていました」。2対1で迎えた9回裏、堀井監督は迷わず、渡辺和を四番手に起用した。先頭打者を失策での出塁を許したが、後続3人を抑え、1点差を逃げ切った。ライバル・早大に連勝で勝ち点2を挙げ、全日程を終えた。 渡辺和は1.17で初の最優秀防御率のタイトルを獲得した。「とてもうれしいです」と喜びを語ると、好調を持続できた要因について「四死球を少なくいけたことと、ストレートで押せるようになったことです」と語った。また、「渡辺憩(慶應義塾高)が僕に合った配球をしてくれて投げやすい」と、バッテリーを組んだ後輩の1年生捕手を称えた。 初めて規定投球回数に到達した今秋は13試合中9試合に登板。3勝2敗。54イニングで57奪三振と、ここ一番で三振を奪えるのが武器である。今春までは最も自信があるというスライダーに頼る配球だったが、投球の原点である真っすぐの質を高めた。中根慎一郎助監督との二人三脚で、再現性を追求する投球フォームを確立させたことが、リリースポイントの安定につながった。計11四死球と、課題としていた制球力も改善された。 精神的な充実度もあった。絶対的エースの右腕・外丸東眞(3年・前橋育英高)がコンディション不良により、シーズン途中離脱。チームを背負う覚悟を持った2年生左腕が一本立ちした。早大戦での2試合で、一皮むけた。 「(早慶戦の)大観衆の緊迫した中で投げられたことは、財産です」 もちろん、満足はしていない。早大から勝ち点を奪い有終の美を飾ったものの、5位という現実は変わらない。渡辺和は背筋を伸ばす。 「今秋の結果に満足せず、より今よりもレベルアップして、来年の春に挑みます」 マウンド度胸が抜群である。高松商高では主将・浅野翔吾(巨人)と同級生。3年夏の甲子園では8強進出を遂げた。神宮でも大舞台になればなるほど、力を発揮する。残り4シーズン、2年後のプロ入りを目指す渡辺和の投球から目が離せない。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール